ビター&スィート

ツイート
Welcome to Adobe GoLive 4
ビター&スウィート

才能豊かなシンガーソングライターとして音楽界の注目を集めているMe'Shell Ndegeocelloだが、彼女はしばしばアグレッシヴな人種差別主義者、あるいは男嫌いのレズビアンと呼ばれ、社会から冷たい視線を浴びることがあるという。しかし、今回我がLAUNCHのエグゼクティヴエディターであるDave DiMartinoとのインタヴューでは、笑うことが大好きで、あらゆる人種や性別の人々との交流を楽しみ、時にはまるでスタンドアップコメディアンのように人生のおとぎ話で人を楽しませることもあるという、意外な一面を見せてくれた。
「私、知らない人に『君が白人嫌いだってことは知ってるけど、でも君の音楽は大好きだよ』って言われるのが大好きなの。一体それに何て答えればいいと思う? 私は人種差別主義者なんかじゃないもの。だから、黒人として、しかも女性として、この階級社会の底辺で生きている現実がどんなものかってことをちょっと教えてあげるの。でも、人間は大好き。人との出会いって、この世で最も素晴らしいことじゃない」

Ndegeochelloのファンなら、この世で最も素晴らしいのは彼女がニューアルバムをリリースする時だ、と言うだろう。彼女の最新アルバム『Bitter』はバンド形式をフィーチャーした作品で、Wendy & LisaのLisa Colemanがゲストとして参加している。これは、熱狂的なPrinceフリークであるNdegeochelloにとっては、さぞかし胸踊る出来事だったに違いない。『Bitter』を聴いたファンたちに何を感じ取ってほしいか、という質問に、Ndegeochelloはこう答えている。
「Jimi HendrixやJoan Armatrading、Bob Dylan、Lenny Kravitzを思い出しながら聴いてほしい。黒人社会ってとてつもなく広いけど、それらを統合している一要素が音楽なの。1つの物事にあまりとらわれ過ぎるのは良くないと思う。このアルバムは単に私の人生の一部分でしかないし、次はまた違う私になってるはずだしね。人は変わるって事実を受け止めなきゃ」


「うわっ、バカでかい黒人の
レズのおばさんだ!」って言うでしょうね。

LAUNCH:
アルバムのタイトルを『Bitter』にしようと思ったのは何故ですか?

MESHELL:
『Bitter』 というタイトルは、苦いものを経験して初めて美味しいものが分かるってことを意味しているの。仏教哲学で「万の喜びあれば万の悲しみあり」って言うようにね。今度ばかりは、恋愛は必ず苦痛を伴うものだということを認めようと思って。そしてそれが、この作品全体のテーマなのよ。

LAUNCH:
今回あなたが起用したプロデューサーについて教えてください。

MESHELL:
このアルバムではCraig Streetを起用したんだけど…実は、彼は私の第2希望だったの。プロデューサーの第1希望はDavid Gamsonで、でも、レコード会社が「ピンとこない」って。とても悲しかったわ。本当にがっかりした。それで、誰か長年知っている人にお願いしようと思ったわけ。Craigとは私が17歳の時からの知り合いなの。Hendrix Foundationから奨学金をもらうときも助けてもらったわ。全然知らない人と仕事をするのは、私には難しいわね。だって、よく知ってる人なら一緒にコーヒー飲みにいったりもできるじゃない。このアルバムについては、曲作りの時点で、前の2作と比べてアコースティック色の強いものになるなって感じた。他の2枚は凄くプロデュース性が高かったし、それはそれで良かったの。いわゆるレコード作りって意味でね。ちょうどPink Floydの『The Wall』を聴いたときみたいに、それは驚きの連続だったわ。ライヴで聴くのとCDで聴くのと全然サウンドが違うんだから。Davidと私はこうやって巧妙に人を騙すのが大好きなの。でも、Craigは正反対だった。

LAUNCH:
レコーディングに参加したミュージシャンについて教えてください。

MESHELL:
このアルバムは、5人のとってもコアな人たちが集まって出来た作品なの。まずリハーサルして、それから録音するって形でね。CraigはCassandra WilsonやKD Lang、Chris Whitelyなんかを過去に手掛けているけど、今回はまたちょっと違ったアプローチだった。Wendy & LisaのLisa Colemanも参加してくれたけど、彼女はまるで'90年代のBill Evansね。言っちゃ悪いけど、彼女ったら、始終ヘロインを打っては訳のわからないことを呟いてたわよ。それからDoyle Bramhall II。彼のお父さん(Doyle Bramhall)はStevie Ray Vaughanにいくつも曲を提供した人で、DoyleはさしずめStevie Ray VaughanとJimi HendrixStevie Wonderを足して3で割った感じね。信じられないくらいソウルフルでブルージー。本当にあのバンドはコアだったわ。他の人と仕事をするのは楽しかったし、一生に一度くらい純粋にベースプレイヤーに徹してみるのもいいものよね。素晴らしい経験だったわ。

LAUNCH:
あなたのサウンドはどんな風に進化しましたか?

MESHELL:
私は1stアルバムも2ndアルバムも大好きなの。だって2枚とも、その当時私がどこにいたか、私の心理状態がどんなだったかを証明してくれる作品だもの。
1stアルバムの大部分は17~18歳の時に書いた曲で、その頃の私の居場所を如実に物語ってる。レコード制作のプロセスっていうのも、当時の私にとってはもの凄く衝撃的だったわ。実は、あれはCurtis Mayfieldを意識して作ったアルバムなの。ヘヴィなギターと複雑なアレンジを使ってね。Curtisのスピリットをこの作品で表現できたことは、私にとっては大きな誇りだった。それから、Joshua Redmanがレコーディングに参加してくれたことも。
そして2ndアルバム。私、本当にこのアルバムが大好きだった。Davidと私がたった2人で作った作品だったから。2人だけで部屋にこもってコンピュータと向き合ってね。このアルバムは全曲ProToolsを使ってレコーディングしたのよ。文字どおり何もかも。どんなにプレイしても疲れないドラマーがいて、しかも彼を家に持ち帰って細切れにして、さらにまた自分の望みどおりのプレイをさせることができるなんて、素晴らしいじゃない。本当に、座ってるだけで完璧な作品が作れたあの年は最高だったわね。でも今年は、それはしたくなかった。それに、この次のアルバムも全然違うものになると思うわ。私は大体3年間隔でアルバムを出してるから、そうね、次も絶対100%タイプの違う作品になるはずよ。

LAUNCH:
あなたはニューアルバムを携えてシーンの最前線に戻ったわけですが、今日の音楽ビジネスについてはどう思いますか? 音楽業界は今、低迷していると思いますか?

MESHELL:
音楽業界は何ていうか…もちろん好きよ。嫌いだって言うのはバカげてるし、だいいち嘘になってしまうもの。でも、時々ノスタルジックな気分に浸って「どうして'60年代の頃みたいに行かないのかしら」って思うこともあるけど。歌にしたいことが沢山あったあの時代みたいに、ってね。あの頃は、個人の政治的見解とか感情について声明を出すことができたし、それがすごく重要なこととして受け入れられてたと思う。それに、1つのレーベルに100組ものグループが所属する、なんてこともなかったし。この業界は好き。でも、ノスタルジックになっちゃうのよね。要するに、自分の居場所はどこなの?とか、誰とバンドを組めばいいの?とか、今は男性グループの時代だからちょっとね、とか、そういうことなんだけど。

LAUNCH:
音楽業界の現状について懸念する部分はありますか? あなたのようなアーティストには居心地が悪いかな、と思うのですが。

MESHELL:
皮膚の色によってやるべき音楽のジャンルが左右されるっていうのは本当に頭に来るわね。それから、「君にはヒット曲がないから、ラジオのオンエアは獲得できないし、アルバムも売れないね」って言われた時もつらいわ。もの凄くストレスが溜るし、果たして自分には才能があるのかどうかって思いっきり落ち込んじゃう。と言うか、Joan Osborneは確かに大ヒットを飛ばしたわよね。でも、いったい今彼女はどこにいるの? Backstreet Boysにしたって、35歳になってもまだBackstreet Boysをやってると思う? それに、私がもっと歳をとって、若い子に「Snoop Doggy Dogを憶えてないの? 僕らが子供の時によく聴いてたう×こミュージックじゃん!」なんて言われるところなんか想像すると、笑っちゃうわよ。私はもう夢見たりなんかしないけど、でも、インターネットが状況を変えてくれるといいわね。そしたらレーベルとの契約を切って、友達のためだけにCDを作って、それをインターネットで売るわ。きっと上手くいくはずよ。その方が、Billboardのチャートを心配したり、インタヴュー受けたり、雑誌の表紙に載ったりするより、よっぽど楽しそうじゃない。メディアってうざったいもの。

LAUNCH:
“本当のMeshell”を社会は理解していると思います?

MESHELL:
私のインタヴューを読んだ人は「うわっ、バカでかい黒人のレズのおばさんだ!」って言うでしょうね。まず目につくのはそういうところなのよ。つまらないったらありゃしない。もしくは、「John Mellencampが君のキャリアを作ったんだろう」とかね。私はそれよりとっくに前にアルバムを出してたっていうのに。悲しいけど、アメリカはいつからそんなに陳腐になってしまったのかしら。Tom Cruise とNicole Kidmanが『Eyes Wide Shut』のためにセックスセラピーに通ったかどうかを気にする人の方が、この映画がStanley Kubrickの遺作だってことを気にする人より多いってことが、このことを完璧に証明しているいい例よ。それからLilith Fair。一体みんな、音楽が素晴らしいから観に行くのかしら、それともただ女の子をナンパするため? まず音楽が目当てじゃないわね。今じゃRobert Hilburnsのような音楽ライターはもういないし、ミュージシャンにしたって音楽に対してそれほど確固たる思想なんて持っていないのよ。Eminemの音楽なんて最高にマヌケじゃない。まあ、リズムの面から言うと、彼の隠喩表現はこの上なく興味深いけど。なのに、ネコも杓子も彼は偉大な白人ラッパーだって言うのよ。じゃあ、彼が二重人格で、使い古されたサウンドを寄せ集めてるだけだってことや、Slick Rickにそっくりだって事実はどうなるのよ? 彼のこういう悪知恵については誰1人として何も言わないじゃない。ただ白人ってことだけで。いずれはこういう状況が変化して、人々がもっと音楽そのものに興味を持ってくれたらいいな、と思うわね。もしくは――どうぞ私のことを批判してちょうだいって感じだけど――彼らが言っていることがもっと面白くなればな、ってね。

LAUNCH:
あなたの音楽ではスピリチュアルなことが重要な役割を果たしたりしますか?

MESHELL:
当然よ。私は信心深くはないけど、とてもスピリチュアルな人間よ。田舎臭く聞こえるけどね。でも、宗教には節制や規律がつきものだけど、私にはそういう厳しい規律はないの。もちろん、天の力は信じてるわよ。この青くて大きい星を動かしているのがどんなものであるにせよね。神と性、スピリチュアリティ、そして人間――これらはすべて上手く共存することができるし、どれが欠けても他が存在できないの。性的な表現を問題視してる宗教はキリスト教だけよ。東洋の宗教では…たぶんコーランにあると思うんだけど、純潔は神の顔に唾を吐きかけるようなものだって。神が私たちにそういう欲望と能力を与えてくれたんだから、それをフルに使えばいいじゃない。人生って矛盾だらけよね。我々は性的なものをこれだけ忌み嫌っているのに、かたやLottは山に隠って自分の娘たちとセックスするんだから。これ、聖書に書いてあるのよ! 人間のそういう部分を表現するのは素晴らしいことなの。求められたいっていうその弱さを認めるべきよ。文化という枠の中ではちょっとあからさまかもしれないけど、人間に水が必要なのと同じくらい自然なことなんだもの。

私、コメディアンに向いてると思うの。
冗談じゃなくてよ。

LAUNCH:
幼い頃からずっと音楽に興味があったのですか?

MESHELL:
15歳くらいになるまでは、ほとんど興味なかったわね。ちょうど私がその歳のころ、Princeがデビューしたのよ。で、思春期にはよくあることだけど、私、あの美しいルックスに恋しちゃったの。それに、彼があらゆる楽器を操れるって事実も私にとってはもう信じられないことだったのよ。リズムもメロディも、全部1人でやっているなんて。それから、Stevie Wonderも同じように1人ですべての楽器を演奏しているってことを聞いたわ。その後、Policeにのめり込んでいった。私はジャズミュージシャンと暮らしてたことがあるから、John Coltraneなんかのレコードも沢山持ってる。一番変わってたのは私の兄ね。兄はサウンドトラックに夢中だったの。ホント変わってるわよ。ベースのサウンドしか入ってない『Deep』のサントラ盤が大好きだったんだから。私は何でも聴いたわ。母はブルースなら何でも聴いてた――Millie Jacksonとか、Aretha Franklinとか。Aretha Franklinはすべてのソウルミュージックの原点ね。PILにもハマったわ。その後、Simple Mindsが出て来て。そして『Pretty In Pink』がきっかけで'80年代の音楽ばかり聴くようになったんだけど――中でもScritti Polittiには恋しちゃってたわね。私のプロデューサーのDavidはScritti Polittiのメンバーなのよ。とにかく、'80年代ものとイギリスものなら何でも良かったわ。それから何年かして、ニューヨークでBlack Rock Coalitionの活動に参加するようになって、Jimi Hendrixを聴いたの。それ以前にも彼の音を聴いたことはあったんだけど、ちゃんと集中して聴いたのはその頃が初めてだったのよ。「これだ」って思った。彼とは魂の部分がもの凄く似てるなって感じて、恐くなったわ。だって、私が他人から言われることを、彼も言われてたんだもの。例えば、私はいつも他人から歌ってくれって頼まれるけど、本当は自分の声が大嫌いなの。だけど、実は彼も自分の声が嫌いだったのよ。人から聞いたことだけど。彼はとても背が小さくて、ハーレムに住んでて、いつも人に見られてると感じてたそうよ。それから、Hendrixの版権を持ってるAlan Douglasに会って、マルチトラックで録音されてるアウトテイクものを聴かせてもらったこともあるわ。一生のうちに一度でもHendrixのソロのギター曲を聴くことができたら、あの神業にもの凄い衝撃を受けるはずよ。人生変わるわね。

LAUNCH:
長年のPrinceファンとして、彼とあなた自身を比較してどう思われますか?

MESHELL:
自分をこき下ろさなきゃならないでしょうね。実際、Princeと比べられて酷評されたことがあるし。あの時、1週間は誰も私に声をかけられなかったわね。もう頭の中が空っぽで虚ろだった。本当にキツかったわ。「わかった、もうレコードは作らない」って思った。でも、その後、彼に会うことができて、突然私の音楽ライフはバラ色になったの。PrinceにもChaka Khanにも会ったことがあるわ。私って結構ミーハーで、グラミー賞にノミネートされた時も、頭の中は有名人に会えるってことで一杯だったのよ。自分のサイン帳を持って行って、Rage Against The Machineの隣に座ったの。Herbie Hancockとも一緒に仕事できたし。本当にスターに会うと感激しちゃうのよね。Billy Zaneがレストランに入ってきた時も、もう舞い上がっちゃって。これこそこの仕事の楽しいところよ。自分の大好きで敬愛する人と会えるんだから

LAUNCH:
David Gamsonが手がけたScritti Polittiのアルバム『Anomie & Bonhomie』について聞かせてください。

MESHELL:
完璧な音楽って感じ。DavidはBootsy Collinsとファンクミュージックが大好きなんだけど、イギリスのエレクトロニカも好きなのよ。彼らのニューアルバムは8月に米国発売されるわ。私もたまたまそのレコーディングに参加したの。Mos Defもね。ヴォーカルはGreen (Gartside)がやってる。NirvanaとDavid Gamsonの出会いって感じね。本当に一風変わったアルバムよ。

LAUNCH:
『Bitter』の結果には満足していますか?

MESHELL:
このアルバムを聴いた時、何か成し遂げたっていう感慨は全くなかった。でも、自分的に一番傑出していると思う曲は――多分、自分が演奏に加わってないからだろうけど。他の人が自分の曲を演ってくれているのを聴くのは凄く気分がいいじゃない――“Beautiful”ね。これは、このアルバムで最初にレコーディングした曲なの。ドラマーがスタジオに来なかったせいでね。私が曲を書き上げたのがレコーディングの前の晩だった。きっと、だからこの曲が一番好きなのね。アルバムの中で一番ナチュラルな仕上がりになっているから。それから、一番誇りに思っているのがHendrixの曲(“May This Be Love”)。愛、人との関係、感情。これは、誰もが持っている感情について歌った曲なのよ。

LAUNCH:
あなたの名前を聞いて多くの人が混乱すると思うのですが、その名前がキャリアの妨げになることはありますか?

MESHELL:
もし私の名字がNdegeocelloじゃなかったら、もっとアルバムが売れていたでしょうね。そのことはもう100万回くらい言われたわ。でも、もし私が白人だったら、それ以上に売れてたはずよ。

LAUNCH:
子供の頃に好きだったスターは誰ですか?

MESHELL:
Princeよ。いつだって彼に決まってるじゃない。17歳になるまで私は本当に子供だったわ。家にはHooverの掃除機があったんだけど、それでJames Brownの真似をするのが大好きだったの。自分の方にくるっと回転させてね。めちゃくちゃ楽しかったわ。

LAUNCH:
あなたは人種についてよく言及されていますが、この人種というものはあなたの音楽とどう関わっているのでしょうか?

MESHELL:
私がレコーディングに参加してもらいたいと思うのは…その時に流行している人だったら誰でもいいのよ。Miles Davisは人からよく「Miles、お前のバンドは白人ばかりじゃないか」と言われていたそうよ。そんな時彼は「別に気にしないね。ちゃんと自分のパートをこなせる人だったら、息が赤くて皮膚の青い奴だって、別に構わないさ」と答えていたんだって。以前にミーティングで「君のファン層は18~25歳の黒人だね」って言われて、とても悲しい思いをしたことがあるの。でも、コンピュータならこういった状況を完全に変えてくれると思うわ。顔が見えないし、アクセスすればどんな人でも買うことが出来るもの。

LAUNCH:
あなたにとって理想のコンサートラインナップとは?

MESHELL:
RageA Tribe Called Questなんかとショウができる日を夢見ているの。純粋に音楽的な部分だけでね。彼らが良い共演相手だからというよりも、ただ音楽的に似たところがあるからってことでしょうね、きっと。だって、彼らはライヴにデモを持ち込んじゃうもの。そんな中で、観衆の興味を他のことに向かせるなんて、まず無理よ。誰かにスプーンでう×こでも食べさせられたら、私も逆に気に入って、自分もそれに参加しようと思っちゃうだろうけど。 Lilithは本当にキツいわ。文化的な面で、黒人社会を象徴するバンドとして批判の的にされるから。本来なら、音楽とかそういうものを聴くために来るべきなのに。一体どうすればいいのかしらね。そのうち何か行動を起こしたいわ。自分でツアーをやるとか。でも、ヨーロッパでは全然状況が違う。完全に対照的なの。聴きたいものを何でも聴くことができるのよ。私が参加したショウの中で最高だったのはMagmaね。皆が知ってるかどうかわからないけど。Magmaの後に私が出て、次にSteve Colemanがプレイして――Steve Colemanってサキソフォンプレイヤーと5人のキューバ人ドラマーのステージだったんだけどね。その夜は、ショウが進めば進むほど、不思議な雰囲気になっていったわ。でも、素晴らしい夜だった。KIIS(トップ40番組を放送するL.A.のラジオ局)では絶対聴けないし、もう誰も体験できないわね。あんなショウは二度とないわよ。

LAUNCH:
あなたが実際にはとても面白い人だということに世間は気付いていると思いますか? 真面目に答えてほしいのですが。

MESHELL:
ほとんどの人は私のことを攻撃的な黒人で、人種差別主義者で、男嫌いだと思ってるわ。笑っちゃうわよね。メディアには多分もう、そういう部分も出てると思うんだけど、私、コメディアンに向いてると思うの。冗談じゃなくてよ。マイクを持って立ってるだけで、ものすごく自然に感じるのよね。で、人に話しかけるの。ねえ、私は煙草は吸うけどお酒はやらないし、遊ぶのも大好きなのよってね。皆ものすごく誤解してるわよ。ショッピングモールで知らない人をからかったりもするわね。だって、その後二度と会うことなんてないでしょ? 楽しいじゃない。そんなの誰も気にしやしないし。それから、私、知らない人に「君が白人嫌いだってことは知ってるけど、でも君の音楽は大好きだよ」って言われるのが大好きなの。一体それに何て答えればいいと思う? 私は人種差別主義者なんかじゃないもの。だから、黒人として、しかも女性として、この階級社会の底辺で生きている現実がどんなものかってことをちょっと教えてあげるの。でも、人間は大好きよ。人との出会いって、この世で最も素晴らしいことじゃない。自分がいいと思ったことをやるべきよ。

LAUNCH:
『Bitter』を聴いたファンたちにはどんなことを感じ取ってもらいたいですか?

MESHELL:
Jimi Hendrixを思い出してほしいわね。それから、Bob Dylanの初期の作品や、Simon & Garfunkelの『Sound Of Silence』をプロデュースしたTom Wilsonのことも。Joan ArmstrongやLenny Kravitz、世界中のCree Summerたちもね。黒人社会はとてつもなく広いわ。音楽はそれらを統合している1つの要素だけど、1つの物事にあまりとらわれ過ぎるのは良くないと思う。このアルバムは単に私の人生の一部分でしかないし、次の作品ではまた違う私になってるはずだしね。今、私は30歳だけど、20歳の時にしていたのと同じことをするつもりはないわ。人は変わるって事実を受け止めなきゃ。

by dave_dimartino

この記事をツイート

この記事の関連情報

*

TREND BOX

編集部おすすめ

ARTIST RANKING

アーティストランキング

FEATURE / SERVICE

特集・サービス