誠意と信念の人LL、15年のキャリアを総括する

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誠意と信念の人LL、15年のキャリアを総括する

俺にとっては特に目新しいコンセプトというわけじゃない

LL COOL Jはニューアルバム『G.O.A.T.(Greatest Of All Timeの略)』について語る。

そう呼んでもいい権利を得たと思うんだ。この世界で生き残ることができたからね。俺は80年代と90年代を別々に捉えている、わかるかい? 俺は自分のやっていることに自信を持っているし、そのことは話してきた。それで世界中の人たちに俺の考え方を理解して欲しいのさ。賛成できるかどうかは彼ら次第だけどね

Impact(ナッシュヴィルで4日間開催されたブラックラジオ局の会議)でのメインイヴェントが行なわれたOprylandボールルームに詰め掛けた2000人強のパーティ客は、確実に彼の考えに同意したようである。

LLはその夜たったひとりの出演者で、彼が「I Can't Live Without My Radio」「I'm Bad」「I Need Love」「Mama Said Knock You Out」といった名曲、とりわけ「Rock The Bells」を演奏すると聴衆は熱狂し、叫び、一緒にラップし、回転ステージ上でパフォーマンスするLLが延ばした手を叩こうと手を延ばしていた。

密度の濃い45分間のショウが終わるころニュージャック狂の大半は息を切らし、'85年に「Radio」でデビューしたヴェテランのラッパーは完全に汗まみれになっていたが、失望した観客は一人としていなかった。

その翌日LLはImpactの会場となったホテルの会議室のひとつに陣取って、自身のキャリアに対するアプローチについて説明を試みてくれた。

俺は心に感謝と謙遜の気持ちを込めて歩んできた。それには多少の信念と決意そして自信が伴っていたが、尊大なところは少しもなかったつもりだ

確かにニューアルバムのタイトルは多少傲慢に思えるかもしれないが、そのディスクにおいてLLがなぜ自分はこれまでにマイクを握った中で最高のラッパーだと考えているのかを説明しているのは、イントロのたった1行の詞(「
だって俺は15年間、みんなを一列に立ち上がらせ続けてきたんだぜ…」)だけである。それ以外のところでは、単に音楽がすべてを語るのに任せようとLLは決めているようだ。

そして皮肉なことに、彼の名前の元にもなった(Ladies Love Cool James)トレードマークともいうべきメロウなR&Bバラードは『G.O.A.T.』では目立たない場所に置かれており、代わりに16歳のDMXTupacのファンにアピールしそうな男性ホルモンがドライヴする曲がフィーチャーされている。

JaRuleをフィーチャーした「Back Where I Belong」でLLは、(自分のファーストアルバムをプロデュースした)Wyclef Jeanとチームを組んでキャリアを妨害しようとしたと主張したCanibusとの'98年の歌詞での対決を回想している。

他のトラックではいつものアンダーグラウンド的スタイルで、LLは敬意を抱く同時代のヒップホッパーたちとチームを組んで、今でも若手と一緒にやれることを証明してみせた。DMX, Method Man, Redmanが「Fuhgidabowdit」に参加、Snoop Dog, Xzibit, Jayo Felonyが「U Can't F--k With Me」でコラボレート、そして「Queen Is」ではMobb DeepProdigyがゲストとしてフィーチャーされている。

アルバムの全曲の中でも「Homicide」は最もLLにとって重要な作品である。この曲においてLLは3人の友人の死について言及している。最も注意を引くのはLLが“不埒な態度でこんなことを言うんじゃねぇ/だが、コロバイン事件のようなことはゲットーじゃ毎日起こってるんだ/そして実際に何か起こっても、みんな何も言えないでいるのさ”とライムするコーラス(サビ)の部分である。

コロンバインで起こったことは恐ろしい悲劇だとは思うし、あのガキどもや人々がやったのはひどいことだろう」とLLは断言する。

だが、こんな事件が起きなきゃ状況は変わらないのかい?

LLは続けた。

時として我々は特定の人間に関してしか人の命を気にしていないと思える場合があることが興味深く感じたのさ。つまり、特定の社会経済的ステータスとか、特定の人種や宗教がからんでいるときだけ関心が払われるんだ。常にそうしたものが存在して、まるでリンチピン(車輪留めのくさび)のようにある種の触媒として機能し、我々の関心を集めるのだが、人命は人命で変わりないのさ

アメリカの残りの人々、世界の残りの人々がこの件について聞くことができれば、状況を変えることができると思う

LLは「Homicide」で言及した友人の死について語っているが、その死はコロンバインの虐殺事件と比べて4分の1ほどの関心さえ集めることはできなかった。

例の銃規制法はずっと前に決まっているべきだった。そうすれば現在の人命だけでなく、これまでに多くの命が救われたはずだ。都会のコミュニティで失われた尊い命の多くが、そしてあらゆる人の命がね。どうしてこうした銃規制法とかの方策が、10年、15年前に論議され始めなかったのだろう? 何らかの不孫や悪意で言っているわけじゃない。反逆者になろうとか、ある種の背教者になろうというのではなく、単に真実について語りたいんだ

「Homicide」の件でCool Jが非難を浴びることがあったとしても、それは彼にとって初めてのことではない。彼が'86年に最初のロマンティックなラップバラード「I Need Love」をリリースしたとき、それは疑う余地のないヒットになり、最終的に彼のペルソナの重要な部分となる女性に対するリズミックな叙情歌という作品群につながったのだが、ハードコアなヒップホップのファンは不満をもらしたのである。

実際Canibusは「Second Round K.O.」において“テメエのファンの99%はハイヒールを履いている”とLLを攻撃したのだった。

アル・カポネだって奥さんのことを愛していたに違いないと思うけどね」、LLは率直に反論した。

俺は愛を恥じないし、タフガイだと主張したこともない。叩かれたら叩き返すが、俺はタフガイじゃないし、俺の本質はそんなところにはない。正直なレコードを作るということだけが俺の本質だ。俺は自分の気持ちに正直だし、感情も素直に表現している。そうした誠実さが重要だと考えているのさ

LLにとって誠実さを実行するということは、女性に対する自分の態度を認識し、それを公開するほどナイーヴになるのを許容することを意味する。そうした弱い部分は一部のラップファンから常に受け入れられてきたわけではないが、それでも彼はテレビシリーズや膨大な映画でのキャリアは言うまでもなく、自身の名義による7枚のアルバムをプラチナあるいはマルチプラチナに輝かせているのだ。

我々を成功から遠ざける唯一のものは恐怖だ

LLは自身の長く印象的なキャリアについて語っている。

そして恐怖を克服させてくれる唯一のものが信念なんだ

by Billy Johnson Jr

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