レディオヘッドが音楽業界を切る! トムとジョニーが語る新作、インターネットそして音楽業界 Part.2

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レディオヘッドが音楽業界を切る!
トムとジョニーが語る新作、インターネットそして音楽業界


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「ネットでいろんな曲が出回っている最大の理由は、ほかに聴く方法がないからだと思う」 トム・ヨーク

最新アルバム


『Hail To The Thief』

東芝EMI
TOCP-66185 2,548(tax in)


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――レコーディングする前にライヴで新曲をプレイしたけれど、アルバムへの影響は?

THOM:(ギタリストの)Ed(O'Brien)のアイデアだった。

JONNY:素材を試す健全なやり方だ。ライヴでは、どの曲が受けて、どの部分をカットしなければならないか、知ることができる。

THOM:でも、おもしろいのは、頻繁に変更があること。すべての曲を試そうとしてるわけじゃないんだ。だって大まかにはわかってるし、人々が納得してくれるかどうかを見たいんだ。まあ、まったくお粗末で変更しなければならないときもある。単に仕事を早くする方法だよ。それで、あんな突拍子のないことをしたんだ。何を演奏するか決めずに、ツアーをブッキングしたり。素速くまとめるにはそれが唯一の方法だから。僕の場合は、考える時間があまりなかったから、普通では書かない歌詞を書いた。何であれ、そのときにあるものが、一番なんだ。思ったときは、もう遅い。厳しいよ。

――Morriconeは今回のアルバムに影響が深い?

THOM:いや。そうじゃなくて『OK Computer』にだよ。

――それじゃ、今回は?

JONNY:自分たち自身を聴いた。3ヵ月のリハーサルからスタートして、1週間ごとにCDに収めて……。

THOM:デモもあるよ。

JONNY:レコーディングした曲にエキサイトして、それを聴いていたんだ。

THOM:僕はあまり聴かなかった。Jonnyは一生懸命だったけど、僕はそうじゃなかった。

JONNY:そう。曲をよく知ろうとしたんだ。でも、すべての音を完璧にしようとしたわけじゃない。曲には2つの面がある。アイデアとして頭の中にあって、どんな曲になるか、レコーディングしたらどうなるか、誰もが分かっているもの。次に、それを形にするためにスタジオで実際の作業をするんだ。

――スタジオに入るときにプレッシャーはある? ありきたりの質問だけれど、アルバムごとに、前作よりもいいものを作らなければならないという思いで、リリースするたびに水準が高くなっていくような……。特に、多くのファンが期待に胸を躍らせて、今か今かとニュー・アルバムを待っているときには。

JONNY:これ以上はできないと思う。ここ4、5年はライヴでいいプレイをしている。スタジオで同じようにリラックスできるようになったのは、つい最近なんだ。固くならずに、楽しんでいる。

THOM:個人的には、今ではスタジオに入るのが何ヵ月も前から楽しみなんだ。それがどんなスタジオであってもね。だから、もう嫌だ、という思いはない。それどころか“いいね。やっとできるんだ!”って感じだよ。

JONNY:スタジオはすばらしい。1日の終わりには、その日の朝に存在してなかったものが生み出される。それは、大勢の人々から生まれる、何か物理的な、存在感のあるものだ。何もないところから、情熱に満ちたレコーディング物が創造される。すばらしいよ。

THOM:期待感については、ナンセンスだと思う。おかしいよ。長くは続かない。今回のレコードに関しては、期待感は形成過程のひとつでしかない。Edがイギリスへ賞をもらいに行った……なぜって? ブリット・アワードさ。たいへんな賞だけど、彼は行った。この賞では、いつもテーブルがあってカメラを前に座るんだ。“わー、俺たちってすごい!”という感じで。ところが、歳を取って、ちょっと変わってくると、テーブルが奥の方にあって、照明が薄暗くなる。老いぼれのステージさ。Edは賞から帰って来て、こう言った。“俺たちは老いぼれだ!”。少なからず真実だと思う。まだ(ニュー・アルバムへの)期待はあるかもしれないが、頭のイカれた老いぼれじじいの年代に入ってるんだ。

――新作を出すたびに『OK Computer』パート2とか、『The Bends』のスタイルに戻るんじゃないかと言われるのは……?

THOM:(笑)。そういった噂は、失ったファンを取り戻すためのマーケット戦略として流してる。そう思わせといて、ダーティなトランスを放つわけ。

――噂は公式リリースを前にファンサイトから出るんですが、インターネットについてはどう感じてますか? ダウンロードやファイル交換は?

JONNY:人々がしたいことをするという兆候だ。これからは、もっと優れたレコードを輩出しなければならないと思う。誰もが所有したいと思うような作品をね。カラのCDに数ヵ月かけて気に入った曲を入れる。自分の好きなCDだったら、どうしても買いたいと思うよね。いずれにせよ、お金をかけずに済むのはうれしいんだ。だから、質が向上するればいいと思う。今までは、1枚のアルバムに2曲のヒットと10曲のゴミだった。そういう時代は終わった。インターネットについてはもっと楽観的でありたい。

THOM:ネットでいろんな曲が出回っている最大の理由は、ほかに聴く方法がないからだと思う。ラジオはクソばかりで、あとはインターネットしかないんだ。でも、デジタルラジオがスタートすれば、状況は変わると思う。イギリスではすでに始まっている。インターネットが与える影響がまったく違ったものになる。おかしいのは、レコード業界がインターネットを悪玉にして、崩壊の責任を押しつけている。誰だってわかると思うけど、悪いのは、人々が買いたいと思うよな作品を出せない彼らだ。それに、ミュージック・シーン全体がボロボロで、疲れきっている。誰かがイッパツかまして、正しい方向へ蹴り戻さなければならない。もうひとつ言いたいんだけど、レコードを作って発売まで3ヵ月も待たされるのは頭に来る。待たされる割には、納得のいく理由がないんだ。周囲からは“雑誌のインタヴューが入ってる”とか、いろいろ言われるけど、こっちとしては“あ、そう。それはよかった。たいへん助かるよ!”って感じだ。

――レコード業界に“イッパツかます”ということですが、Radioheadこそ、すでにその大役を果たしたバンドという意見があります。Radioheadが扉を開き、他のバンドが後に続く。たとえば「Paranoid Android」がラジオでプレイされ、3分以上ある曲で、決して単純なポップソングではない……。

THOM:(ニュー・シングルの)「There, There」も同じような感じさ。ラジオ局がインターネットから選んで、プレイし始めたんだ! あれには驚いたよ! でも、いつもチャンスがあるとは限らない。継続するように努力していかないと。意識的に注目を浴びて嫉妬されるようなことはしたくない。そんなことは嫌だ。でも、今だったら大それたことをしても許されちゃうんじゃないかって思うときがある。これをきっかけに業界が良くなればいいと思う。

JONNY:そう考えると、有名バンドだから許されるかも。これからスタートするバントは、かなり苦戦をしいられるだろう。僕たちがスタートした頃は、レコード会社がツアーの費用を負担して……デビューから2年分の資金を出してくれた。でも、この時勢では、レコード会社が収益を上げられない。だから、資金もストップしたし、ラジオやビデオに頼っている。なんだか怖ろしいよ。

THOM:立場が逆転した。

JONNY:まさに、そうなんだ。ラジオが盛り上がれば、バンドを生かすか、殺すかはコンサートじゃなく、ラジオということになる……。あのときツアーの費用がなかったら、オックスフォードに踏みとどまってたよ! アメリカにも来ていない。悲しいけどね。

THOM:それで、レコード会社はインターネットを非難してるんだ。結局は、株主が欲深く、会社は毒が回ってめちゃくちゃだ。彼らが破滅すれば……あぁ、いい厄介払いになるさ!

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By Lyndsey Parker

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