【BARKS編集部レビュー】Astrotec AX60&AX35、脳内イヤホングラミー賞レース爆走中

twitterツイート

あ、ごめんなさい。3月にRHA MA750を紹介をした際に、「イヤホングラミー賞なるものがあるとすれば、2014年最優秀新人賞は、海外部門のDUNU DN-1000とMeze 11 Decoあたりとで競り合う感じ?」とか言っておりましたが、あれからAstrotec AX60とAX35を手にしたことで、修正が必要になりました。私としては、AX60とAX35が熾烈な争いを繰り返している状況で、今現在は首の差でAX60が暫定1位となっております。

◆Astrotec AX60&AX35画像

▲左がAstrotec AX60、右がAX35。

Astrotec(アストロテック)は、イヤホン・ドライバーのOEM/ODM製造を十余年にわたって行ってきた企業が立ち上げた自社ブランドで、基礎技術の高さと蓄積されたノウハウを集中投下、しょっぱなから完成度の高い非常に優れた製品を打ち出してきたメーカーだ。フラッグシップとして登場したAX60は当然のように高評価を獲得、4月になって発売が開始となったAX35も価格破壊の完成度を見せている。AX35が大ヒットを見せるのは間違いないだろう。むしろこれを買わずに何を買えというのか…と言いたいくらいだ。

▲Astrotec AX60。迷いのないどこまでも抜ける陽のサウンドを放つ名機だ。

▲左がAstrotec AX60、右がAX35。ぱっと見の形は全然違うものの、見比べるとデザインには共通性が多々見受けられる。ケーブルが出ている部分がシンプルになった分AX35の方がフィット感がいい。音漏れの心配はほとんどないと思われるが、遮音性はさほど高くない。どちらもケーブルを耳にかけて装着するいわゆるSHURE掛けが推奨されているが、普通の付け方でも問題なく使用できる点が嬉しい。ケーブルのタッチノイズも少なく使用感は上々だ。いずれもケーブルの着脱は出来ない。

▲サウンドを聴き比べたハイブリッドのイヤホン。左からがAstrotec AX60、AX35、DUNU DN-1000、Atomic Floyd SuperDarts。

▲左がAX60、右がAX35の各同梱内容。AX60には交換可能なノズルパーツが付属し、低域の量感をコントロールすることができる。交換パーツが鎮座した金属プレートにはシリアルナンバーも刻印されている。AX35には同梱する円形金属キャリングケースの蓋に、シリアルナンバーが刻印されている。シリアルナンバーがあるだけで愛着もぐんとアップ、所有感も心地よくくすぐられる。

すでに大人気のAX60は、とにかくド派手な音がする。歯切れの良さも絶品で、音は乾いておりスピード感あふれるサウンドである。まるで一切の音響フィルターを排除しどの帯域も遠慮なく出しまくったような、直球の明るいトーンが素晴らしい。ただ一方で、元気良すぎるサウンドが聞き疲れを起こしたり、刺激が強すぎてもう少し控えめのほうがありがたいと思う人も出てくることだろう。実は、まさしくここがAX60の攻略ポイントであり、AX60が素晴らしいとする最大のポイントなのだ。

レコーディングを例にとれば、音色のコントロールは、イコライザーで要らない帯域をカットする手順で調整をする。そもそも無いものはいくらブーストしても出てこないので、欲しいところをブーストするのではなく、要らない部分を減らすことで求める音質を得るのだ。まさしくその感覚でAX60のトーンは自分好みに調整できる。全帯域でみっちりと出力されているAX60だからこそ、イヤーピースの素材、大きさ、耳への装着深度をコントロールすることで、高域を抑えたり低域を抜いたりと、フレキシブルに好みのバランスを生み出すことができる。その調整振れ幅がどんなイヤホンよりも大きく、そこの懐の深さこそがAstrotec AX60の最大の魅力なのだ。

ウレタンチップで高域を抑えるもよし、シリコンチップで元気さをキープするもよし、個々の外耳道次第だが挿入角度や深さで高域の出方も変化するし、密着度は低域の量感を大きく左右する。イヤーチップもサイズを変えるだけで帯域バランスが変化したりもする。多少のスキルも求められるだろうが、そこに決まりはない。先入観にとらわれずいろいろ試してみることで、AX60のキャパシティの大きさがお分かりいただけるだろう。そしてもともとクリアで高解像度であることが、そんな振れ幅の大きさを担保していることを実感するのではないか。これほど楽しいイヤホンもないのだ。

ハチャメチャに元気で陽気なサウンドを出すのがAX60だが、そんな様子を横目に「すいませんでした、はっちゃけ過ぎました…」と頭を冷やし、品行方正に襟を正したサウンドがAX35であろうか。常識的なバランスに整え、万人に「いい音です」と真正面から評価してもらえるストライクゾーンど真ん中のトーンに仕上がっている。AX60とAX35は、型番的も価格的もスペック的にも上下位機種の関係にみえるけれど、私から見ればその違いはキャラの違いであり、音質や品質的には上下関係に位置するとは思えない。完全に好みの問題で、おそらくAX35の方が市民権を得るトーンであろうし、しかも価格はぐんと安いとくれば、お買い得感という点では比較にならないほどAX35が突き抜けている。誰もが気持よくホームランを打てるような守備範囲がAX35の立ち位置だ。

ただ、それでも私がAX60を好むのは、その派手な音を出す個性に惚れているからだ。バランスド・アーマチュアとダイナミック・ドライバーのハイブリッドという意味で、よく比較されるモデルを例に取るならば、DUNU DN-1000はAKG K3003と同系統のサウンドだが、AX60はDUNU-1000のバランスの良さをそのまま確保しながら、Atomic FloydのSuperDartsの持つエッジの鋭さと一触即発のエネルギー感をごっそりと積み重ねたサウンドと捉えている。高域の派手さもAX60とSuperDartsは同等で、かなりのはっちゃけキャラだ。脳髄に直接刺激を撃ちこむような低域の炸裂感はSuperDartsのほうが一枚上手だが、ローミッドの充実度はAX60が上回っており、ここの特性からSuperDartsより肉厚で安定感と迫力がある。

そしてAX35は、そんなAX60からSuperDarts的な暴れん坊部分を取り除いたサウンドなので、計算式上はDN-1000≒K3003≒AX35ということになる。もちろん同じ音であるはずもないが、概ね同じ傾向であると理解していてOKだ。

ハイブリッド設計によるハイファイサウンドを手軽に手に入れのであれば、AX35がベストバイだ。音楽のジャンルも問わず、広く楽しめる。そこから攻めに入ったワンアンドオンリーのハイテンションサウンドに興味が沸いたならば、迷うことなくAX60を手にして欲しい。私のようなAtomic Floyd SuperDarts、オーディオテクニカATH-CK100PRO、SOUL by Ludacris SL99、ファイナルオーディオデザインAdagio II、音茶楽Flat4あたりが好きな人であれば、きっとAX60の良さに痺れると思うんだけど。ヘッドホンで言えば、私のフェイバリットはGRADO PS1000、SENNHEISER HD700も大好きだったり。つまりは「ロック~ポップス系の楽しさやカッコよさ、ノリの良さを最大化させてくれるサウンド傾向」というわけです。

text by BARKS編集長 烏丸哲也

●Astrotec AX-60
市場価格:34000円程度
・ドライバー:10mmダイナミック+バランスドアーマチュア×2
・感度:110db/mW
・インピーダンス:12Ω
・再生周波数帯域:8~28,000Hz
・コード長:1.2m
・プラグ:ステレオミニプラグ(Ф3.5mm)
・付属品
 キャリングポーチ×1
 付属品収納用ケース×1
 シリコン製イヤーチップ大中小×各1セット
 キノコ型シリコンイヤーチップ大中小×各1セット
 ウレタン製イヤーピース×2セット
 イヤーフック×1セット
 保証書1枚

●Astrotec AX-35
市場価格:1万円前後
・ドライバー:バランスド・アーマチュア+ダイナミック
・感度:104db/mW
・インピーダンス:8Ω
・再生周波数帯域:12~23,000Hz
・コード長:1.2m
・プラグ:ステレオミニプラグ(Ф3.5mm)
・カラー:シルバー
・イヤホンタイプ:カナル
・付属品
 付属品収納ケース×1個
 シリコン製イヤーチップ大中小×各1セット
 ウレタン製イヤーピース×1セット
 取り扱い説明書×1枚
 保証書×1枚

◆Astrotec AX-60オフィシャルサイト
◆Astrotec AX-35オフィシャルサイト
◆BARKS カスタムIEM専門チャンネル
◆BARKSヘッドホン・チャンネル


BARKS編集長 烏丸レビュー(■イヤホン ●ヘッドホン ◆カスタムIEM ◇他)
◆CUSTOM ART Pro 330v2(2014-04-13)
●MPC Headphones(2014-04-06)
●Klipsch STATUS(2014-03-30)
●SMS Audio STREET by 50 DJ Pro Performance Headphones(2014-03-23)
◆AK240×カスタムIEM(2014-03-16)

■RHA MA750(2014-03-09)
■Meze 11 Deco(2014-03-02)
◇Astell&Kern AK240(2014-02-22)
◆1964 EARS V6-Stage(2014-02-17)
◆カナルワークスCW-L32V(2014-02-09)

◇EarPeace HD(2014-02-02)
◆Noble Audio Kaiser 10(2014-01-19)
◆Clear Tune Monitors CT-300Pro(2014-01-04)
◇KLIPSCH KMC1(2014-01-01)
■DUNU DN-1000(2013-12-30)

◆Ultimate Ears Reference Monitors(2013-12-16)
◆Ultimate Ears 11 Pro(2013-12-08)
◆earmo Tune5(2013-12-03)
●オーディオテクニカATH-OX7AMP(2013-11-23)
■音茶楽Donguri-欅(KEYAKI)(2013-11-17)

■オーディオテクニカ ATH-IM01~04(2013-10-27)
◇Astell&Kern AK10(2013-10-25)
●フィリップス Fidelio M1(2013-10-22)
◆earmo Tune4(2013-10-12)
◆Ultimate Ears Personal Reference Monitors(2013-10-05)

◆Sensaphonics 2XS(2013-09-30)
■Earsonics SM64(2013-09-23)
◆LIVEZONER41 LZ12(2013-09-15)
◆Ultimate Ears カスタムIEM全7機種(2013-09-08)
◆null audio Elpis(2013-09-03)

■FitEar Parterre(2013-08-25)
◆カナルワークスCW-L12(2013-08-17)
◆Livezoner41 LZ 4(2013-08-06)
■SHURE SE846(2013-08-02)
■オーリソニックスASG-2 with BassPort(2013-07-28)

■Hippo ProOne(2013-07-21)
◆カナルワークス CW-L51a(2013-07-13)
■EXS X10(2013-06-24)
■音茶楽Flat4シリーズ粋、楓、玄(2013-06-17)
◆LEAR LCM-1F(2013-06-10)

◇Ultimate Ears UEブーム(2013-05-28)
◇Stage93 93PC(2013-05-20)
●Meze Headphones(2013-05-08)
●Fischer Audio Jubilate(2013-04-29)
◇ORB JADE casa(2013-04-21)

◆lime ears LE3(2013-04-14)
◇雑誌「DigiFi 第10号」付録(2013-04-06)
●Ultimate Ears UE 9000、UE 6000、UE 4000(2013-04-01)
■開放型インナーイヤーイヤホンおススメ5モデル(2013-03-19)
◆LEAR LCM-5(2013-03-16)

●フィリップスFidelio L1(2013-02-25)
○スマホが与えた音楽リスニングのモラル変革(2013-02-17)
■Klipsch Image X7i(2013-02-04)
◆LEAR(2013-01-27)
◆カナルワークスCW-L05QD(2013-01-13)

◆earmo(2013-01-02)
◆Westone AC2(2012-12-25)
◇Stage93 93SPEC(2012-12-16)
●California Headphone Silverado、Laredo(2012-12-09)
■音茶楽Flat4-楓(2012-12-03)

◆Stage93 Stage 6(2012-11-26)
●GRADO SR60i(2012-11-19)
◇Astell&Kern AK100-32GB-BLK(2012-11-15)
●オーディオテクニカ ATH-WS99(2012-11-10)
■アトミック フロイドPowerJax+Remote(2012-10-29)

◇VORZUGE VorzAMPduo(2012-10-26)
●ファイナルオーディオデザイン heaven VI(2012-10-16)
●beyerdynamic T 90(2012-10-08)
●GRADO GS1000i(2012-09-30)
●SENNHEISER HD 700(2012-09-16)

◆ACS T1 Live!(2012-09-11)
●オーディオテクニカ ATH-AD2000 ATH-AD1000(2012-09-03)
●GRADO RS1i、SR325is、PS500(2012-08-20)
◆FitEar MH335DW(2012-08-15)
●DIESEL VEKTR(2012-08-07)

◆カナルワークスCW-L51 PSTS(2012-07-30)
●Fischer Audio FA-002W(2012-07-25)
●Pioneer SE-MJ591(2012-07-16)
■GRADO iGi(2012-07-12)
●HiFiMAN HM-400(2012-06-26)

●Klipsch Reference One(2012-06-17)
●GRADO PS1000(2012-06-09)
●ULTRASONE edition 8(2012-06-02)
●PHONON SMB-02(2012-05-28)
■音茶楽Flat4-粋(SUI)(2012-05-20)

●<春のヘッドフォン祭2012>、Fischer Audio FA-004(2012-05-13)
◇Hippo Cricri、Go Vibe Martini+、VestAmp+(2012-05-04)
■ファイナルオーディオデザインheaven IV(2012-04-28)
■フィッシャー・オーディオ Jazz (2012-04-22)
●SHURE SRH1840 & SRH1440(2012-04-16)

■FitEar TO GO! 334(2012-04-08)
◆Unique Melody Mage(2012-03-26)
●Takstar PRO 80、HI 2050、TS-671(2012-03-20)
●klipsch Mode M40(2012-03-15)
■Fischer Audio DBA-02 Mk2(2012-03-07)

◆AURISONICS AS-1b(2012-02-27)
■UBIQUO UBQ-ES503、UBQ-ES505、UBQ-ES703(2012-02-21)
◆Heir Audio Heir 3.A(2012-02-15)
■moshi audio Clarus(2012-02-12)
◆Thousand Sound TS842(2012-02-08)

◆Heir Audio Heir 8.A(2012-02-01)
■CRESYN(2012-01-17)
◆Unique Melody Merlin(2012-01-08)
◆カナルワークスCW-L01P(2012-01-03)
■ファイナルオーディオデザイン Adagio(2011-12-31)

◆LEAR LCM-2B(2011-12-26)
●SOUL by Ludacris SL100、150、300(2011-12-23)
●AKG K550(2011-12-20)
■SENNHEISER IE80 & IE60(2011-12-16)
■DUNU(2011-12-14)

◆カナルワークスCW-L10(2011-12-12)
■オーディオテクニカ ATH-CK90PROMK2(2011-12-09)
◆Ultimate Ears UE 5 Pro(2011-12-06)
■REALM IEM856(2011-12-02)
■ファイナルオーディオデザインAdagio III(2011-11-26)

◇Ultimate Ears用交換ケーブルFiiO RC-UE1&オヤイデ電気HPC-UE(2011-11-25)
●Reloop RHP-20(2011-11-22)
■オーディオテクニカ ATH-CK100PRO(2011-11-14)
■SOUL by Ludacris SL99(2011-11-04)
■Fischer Audio Ceramique(2011-10-25)

■SHURE SE535 Special Edition(2011-10-21)
■JVCケンウッドHA-FX40(2011-10-16)
■BauXar EarPhone M(2011-10-10)
■SONOCORE COA-803(2011-10-02)
◆TripleFi 10 ROOTHリモールド(2011-09-25)

■AKG K3003(2011-09-18)
■Atomic Floyd SuperDarts+Remote(2011-09-11)
■Bowers & Wilkins C5(2011-09-06)
■Westone3(2011-09-02)
◆カナルワークスCW-L31(2011-08-26)

◇ORB JADE to go(2011-08-22)
■YAMAHA EPH-100(2011-08-14)
■NW-STUDIO(2011-08-09)
■NW-STUDIO PRO(2011-08-02)
◆FitEar MH334(2011-07-29)

◆ROOTH SE530×8(2011-07-26)
■Westone ES5(2011-07-21)
●SHURE SRH940(2011-07-17)
◆Ultimate Ears 18 Pro(2011-07-15)
■クリエイティブAurvana In-Ear3(2011-07-06)

◆カナルワークス CW-L01(2011-07-01)
■GRADO GR10&GR8(2011-06-25)
◇SAEC(サエク)SHURE SE用ケーブル(2011-06-21)
■フィアトンPS 20&PS 210(2011-06-17)
■ZERO AUDIO ZH-BX500&ZH-BX300(2011-06-11)

■フィリップスSHE8000&SHE9000(2011-06-03)
■アトミック フロイド(2011-05-26)
■モンスター・マイルス・デイビス・トリビュート(2011-05-20)
■SHURE SE215(2011-05-13)
■ファイナルオーディオデザインPiano Forte IX(2011-05-06)

■ラディウス・ドブルベ/ドブルベ・ヌメロドゥ(2011-05-01)
■ローランドRH-PM5(2011-04-23)
■フィリップスSHE9900(2011-04-15)
■JAYS q-JAYS(2011-04-08)
◇フォステクスHP-P1(2011-03-29)

■Klipsch Image X10/X5(2011-03-23)
■ファイナルオーディオデザインheaven(2011-03-11)
■Ultimate Ears TripleFi 10(2011-03-04)
■Westone4(2011-02-24)
■Etymotic Research ER-4S(2011-02-17)

■KOTORI 101(2011-02-04)
■ゼンハイザーIE8(2011-01-31)
■ソニーMDR-EX1000(2011-01-17)
■SHURE SE535(2011-01-13)
■ビクターHA-FXC51(2011-01-12)

twitterこの記事をツイート

この記事の関連情報

TREND BOX

編集部おすすめ

ARTIST RANKING

アーティストランキング

FEATURE / SERVICE

特集・サービス