【BARKS編集部レビュー】ハッピー・プロダクト、茶楽音人Donguri-楽(RAKU)

ツイート

独自開発の特許機構をもって、斬新で心地よいサウンドを次々と生み出してきた音茶楽のイヤホンだが、非常に高い評価を得ながらも、もちろんウイークポイントはあった。ひとつは価格だ。コストパフォーマンスという意味では高く評価されるべき好プロダクトだと思っているものの、それでもやはり絶対値としては高額だ。また、天然素材の手作りに起因する生産量の少なさも否めない。限定生産による生産完了品もあり、欲しくても手に入れられなかった人も多かったという現実もある。

◆茶楽音人Donguri-楽(RAKU)画像

▲茶楽音人Donguri-楽(RAKU)。
▲このカラーは江戸紫(えどむらさき)。
▲左が音茶楽製のDonguri-欅(KEYAKI)、右が茶楽音人製Donguri-楽(RAKU)。素材や細かい作りこみの違いはあるものの、基本構造やサウンドの根幹を担う特殊機構は全て共通している。
▲付属品は、缶ケース、ポリッシュ布、L字アダプタ、取説。
そんな状況下にあって、Donguri-楽(RAKU)の登場は、音茶楽にとって第二フェイズ突入とでも言えそうな注目必須のモデルとして登場した。要するに、大量生産ラインに初めて乗った記念すべき第一号機の誕生なのである。楽(RAKU)は、お家元の音茶楽ブランドではなく茶楽音人(Surround)という新たに作られたブランドからの発売となっているが、これこそ音茶楽の音響技術とTTRの設計製造技術を持ち寄って誕生させたブランドで、ついに音茶楽の持つ特許機構を、高い加工技術で高品質のまま安価に作り上げることができるようになったというわけだ。「いつでもどこでもいい音を安く」という、皆がハッピーになるプロダクトが実現したのだ。

実際、雛形となった音茶楽Donguri-欅(KEYAKI)と茶楽音人Donguri-楽(RAKU)のサウンドは、見事に同系統のサウンド特性を持ち、高域特性の優れたトーンが一貫して引き継がれている。前者が46,440円(税込)であるのに対し、後者は15,120円(税込)。これはもう事件ですよ。

両者に共通なのは、硬質で引き締まった特徴的な高域だ。閉管共鳴によって外耳道内に発生する6KHz近辺のピークをカットするために、通常のイヤホンでは音響フィルターを用いて高域をカットしているところを、Donguriではトルネード・ターボ方式を用いている点が最大のポイントとなる。通常の音響抵抗は不快なピークをカットするための常套手段だが、高い周波数ほど抵抗の影響をうけるので、6KHzだけピンポイントにカットすることができない。というか、6KHz近辺をカットした時点で、それより上の高域はそれ以上にごっそりとカットされる。要するに、それ以上の高域は壊滅的な状態になっていたりするわけだ。にも関わらず「ま、仕方ないわね…」と、なんとなく見逃されてきた長い歴史があるような気もする。

その点、トルネード・ターボ方式というのは、ピークを6KHzに持ったなだらかな山型のカーブで高域をカットするので、閉管共鳴による不快な共振を取り、その前後に存在するヌケの部分やきらびやかさを演出する美味しい高域成分をスポイルすることがない。これが、Donguriシリーズの最も美味しい高域表現の基本メカニズムだ。

このような特殊な構造を有していることもあり、Donguriと似たようなサウンドを聞かせてくれるイヤホンは他のブランドにはほぼ見当たらない。DonguriのサウンドはDonguriでしか得られないので、安価な楽(RAKU)の誕生は、本当に朗報だ。

さて、欅(KEYAKI)と楽(RAKU)のサウンドの違いも気になるところだが、8割方サウンドは同じだ。中低域の厚みは、むしろ楽(RAKU)の方が充実しており、400Hz~1.2KHzあたりの肉感的な重量感は楽(RAKU)の方が前面に出てきている。言い方を変えれば、楽(RAKU)には中域に独特のピークがあるとも言える。これがキャビ素材によるものなのかドライバー固有のサウンドなのかはわからないが、欅(KEYAKI)にはそういった雑味がないので、逆に見れば、量感は少ないものの滑らかさとスッキリとした清涼感のようなものは欅(KEYAKI)の方が上質で、音源の品質そのものが1段上質になったかのような錯覚を覚える。

また、高域のトーンは両者でほとんど変わらないが、実は欅(KEYAKI)のほうが更に高い音域まで伸びており、高域のデリケートな表現力という意味では欅(KEYAKI)の圧勝だ。ただし、高域に関する感想は、個人の外耳道の長さに大きく影響をうける部分である事実を見逃してはいけない。ちなみに、音茶楽の最新機種にFlat4-玄弐型(KURO TypeII)とFlat4-緋弐型(AKA TypeII)という2モデルがあるが、両者の違いは外耳道の長さが28mmの人向けと30mmの人向けというセッティングの違いで、私は28mmタイプにぴったり適合している。たった2mmの違いだが歯擦音をカットするピークが大きくずれるので、両者の聴こえ方は驚くほど違ってくる。音茶楽の試聴アンケートによると、30mmに適合する人のほうが多かったとのことなので、Donguriで感じている上記のサウンドの特性は、耳の穴に深めに装着した状態で初めて共感いただけるものかもしれない。逆に言えば、挿入の深さによって高域ピークの周波数が前後することを意識すれば、自分にとって最も心地よい高域表現をコントロールできるとも言える。イヤーピースの各サイズをうまく活用しながら、最も心地よい音を出す状態を見つけ出せれば、Donguriの魅力を120%楽しむことができることだろう。

何はともあれ、欅(KEYAKI)の3分の1の価格で登場した楽(RAKU)、是非とも一度手にとってそのサウンドを試してみて欲しい。ちなみに4カラーのうち一番の売れ筋人気No.1は、江戸紫(えどむらさき)だそうだ。

text by BARKS編集長 烏丸哲也

茶楽音人(Surround)Donguri-楽(RAKU)
15,120円(税込)
・全4色:江戸紫(えどむらさき)、濃墨(こずみ)、白磁(はくじ)、紅赤(べにあか)
・エレメント:010e004 アコースティック・ターボ回路内蔵φ10mmダイナミック型
・音響方式:トルネード・ターボ方式、密閉型
・出力音圧レベル:106dBSPL/mW
・周波数特性:5~30kHz
・最大入力:200mW
・インピーダンス:18Ω
・質量:約13g
・プラグ:Φ3.5mm 金メッキステレオミニプラグ
・コード長:1.2m(Y型)
・付属品:L型接続コード、Comply T-200Lサイズ(Mサイズは本体に装着)、収納缶、クロス、取扱説明書兼保証書

◆茶楽音人オフィシャルサイト
◆BARKSヘッドホン・チャンネル
◆BARKS カスタムIEM専門チャンネル

BARKS編集長 烏丸レビュー(■イヤホン ●ヘッドホン ◆カスタムIEM ◇他)
■オーディオテクニカATH-CKR10(2014-06-14)
◇estron Music、BaX(2014-06-03)
●OSTRY KC06(2014-05-18)

◆VISION EARS VE6 Xcontrol(2014-05-25)
■Fidue A81(2014-05-17)
◆カナルワークスCW-L32(2014-05-04)
■アルティメットイヤーズUE900s(2014-04-26)
■Astrotec AX60&AX35(2014-04-20)

◆CUSTOM ART Pro 330v2(2014-04-13)
●MPC Headphones(2014-04-06)
●Klipsch STATUS(2014-03-30)
●SMS Audio STREET by 50 DJ Pro Performance Headphones(2014-03-23)
◆AK240×カスタムIEM(2014-03-16)

■RHA MA750(2014-03-09)
■Meze 11 Deco(2014-03-02)
◇Astell&Kern AK240(2014-02-22)
◆1964 EARS V6-Stage(2014-02-17)
◆カナルワークスCW-L32V(2014-02-09)

◇EarPeace HD(2014-02-02)
◆Noble Audio Kaiser 10(2014-01-19)
◆Clear Tune Monitors CT-300Pro(2014-01-04)
◇KLIPSCH KMC1(2014-01-01)
■DUNU DN-1000(2013-12-30)

◆Ultimate Ears Reference Monitors(2013-12-16)
◆Ultimate Ears 11 Pro(2013-12-08)
◆earmo Tune5(2013-12-03)
●オーディオテクニカATH-OX7AMP(2013-11-23)
■音茶楽Donguri-欅(KEYAKI)(2013-11-17)

■オーディオテクニカ ATH-IM01~04(2013-10-27)
◇Astell&Kern AK10(2013-10-25)
●フィリップス Fidelio M1(2013-10-22)
◆earmo Tune4(2013-10-12)
◆Ultimate Ears Personal Reference Monitors(2013-10-05)

◆Sensaphonics 2XS(2013-09-30)
■Earsonics SM64(2013-09-23)
◆LIVEZONER41 LZ12(2013-09-15)
◆Ultimate Ears カスタムIEM全7機種(2013-09-08)
◆null audio Elpis(2013-09-03)

■FitEar Parterre(2013-08-25)
◆カナルワークスCW-L12(2013-08-17)
◆Livezoner41 LZ 4(2013-08-06)
■SHURE SE846(2013-08-02)
■オーリソニックスASG-2 with BassPort(2013-07-28)

■Hippo ProOne(2013-07-21)
◆カナルワークス CW-L51a(2013-07-13)
■EXS X10(2013-06-24)
■音茶楽Flat4シリーズ粋、楓、玄(2013-06-17)
◆LEAR LCM-1F(2013-06-10)

◇Ultimate Ears UEブーム(2013-05-28)
◇Stage93 93PC(2013-05-20)
●Meze Headphones(2013-05-08)
●Fischer Audio Jubilate(2013-04-29)
◇ORB JADE casa(2013-04-21)

◆lime ears LE3(2013-04-14)
◇雑誌「DigiFi 第10号」付録(2013-04-06)
●Ultimate Ears UE 9000、UE 6000、UE 4000(2013-04-01)
■開放型インナーイヤーイヤホンおススメ5モデル(2013-03-19)
◆LEAR LCM-5(2013-03-16)

●フィリップスFidelio L1(2013-02-25)
○スマホが与えた音楽リスニングのモラル変革(2013-02-17)
■Klipsch Image X7i(2013-02-04)
◆LEAR(2013-01-27)
◆カナルワークスCW-L05QD(2013-01-13)

◆earmo(2013-01-02)
◆Westone AC2(2012-12-25)
◇Stage93 93SPEC(2012-12-16)
●California Headphone Silverado、Laredo(2012-12-09)
■音茶楽Flat4-楓(2012-12-03)

◆Stage93 Stage 6(2012-11-26)
●GRADO SR60i(2012-11-19)
◇Astell&Kern AK100-32GB-BLK(2012-11-15)
●オーディオテクニカ ATH-WS99(2012-11-10)
■アトミック フロイドPowerJax+Remote(2012-10-29)

◇VORZUGE VorzAMPduo(2012-10-26)
●ファイナルオーディオデザイン heaven VI(2012-10-16)
●beyerdynamic T 90(2012-10-08)
●GRADO GS1000i(2012-09-30)
●SENNHEISER HD 700(2012-09-16)

◆ACS T1 Live!(2012-09-11)
●オーディオテクニカ ATH-AD2000 ATH-AD1000(2012-09-03)
●GRADO RS1i、SR325is、PS500(2012-08-20)
◆FitEar MH335DW(2012-08-15)
●DIESEL VEKTR(2012-08-07)

◆カナルワークスCW-L51 PSTS(2012-07-30)
●Fischer Audio FA-002W(2012-07-25)
●Pioneer SE-MJ591(2012-07-16)
■GRADO iGi(2012-07-12)
●HiFiMAN HM-400(2012-06-26)

●Klipsch Reference One(2012-06-17)
●GRADO PS1000(2012-06-09)
●ULTRASONE edition 8(2012-06-02)
●PHONON SMB-02(2012-05-28)
■音茶楽Flat4-粋(SUI)(2012-05-20)

●<春のヘッドフォン祭2012>、Fischer Audio FA-004(2012-05-13)
◇Hippo Cricri、Go Vibe Martini+、VestAmp+(2012-05-04)
■ファイナルオーディオデザインheaven IV(2012-04-28)
■フィッシャー・オーディオ Jazz (2012-04-22)
●SHURE SRH1840 & SRH1440(2012-04-16)

■FitEar TO GO! 334(2012-04-08)
◆Unique Melody Mage(2012-03-26)
●Takstar PRO 80、HI 2050、TS-671(2012-03-20)
●klipsch Mode M40(2012-03-15)
■Fischer Audio DBA-02 Mk2(2012-03-07)

◆AURISONICS AS-1b(2012-02-27)
■UBIQUO UBQ-ES503、UBQ-ES505、UBQ-ES703(2012-02-21)
◆Heir Audio Heir 3.A(2012-02-15)
■moshi audio Clarus(2012-02-12)
◆Thousand Sound TS842(2012-02-08)

◆Heir Audio Heir 8.A(2012-02-01)
■CRESYN(2012-01-17)
◆Unique Melody Merlin(2012-01-08)
◆カナルワークスCW-L01P(2012-01-03)
■ファイナルオーディオデザイン Adagio(2011-12-31)

◆LEAR LCM-2B(2011-12-26)
●SOUL by Ludacris SL100、150、300(2011-12-23)
●AKG K550(2011-12-20)
■SENNHEISER IE80 & IE60(2011-12-16)
■DUNU(2011-12-14)

◆カナルワークスCW-L10(2011-12-12)
■オーディオテクニカ ATH-CK90PROMK2(2011-12-09)
◆Ultimate Ears UE 5 Pro(2011-12-06)
■REALM IEM856(2011-12-02)
■ファイナルオーディオデザインAdagio III(2011-11-26)

◇Ultimate Ears用交換ケーブルFiiO RC-UE1&オヤイデ電気HPC-UE(2011-11-25)
●Reloop RHP-20(2011-11-22)
■オーディオテクニカ ATH-CK100PRO(2011-11-14)
■SOUL by Ludacris SL99(2011-11-04)
■Fischer Audio Ceramique(2011-10-25)

■SHURE SE535 Special Edition(2011-10-21)
■JVCケンウッドHA-FX40(2011-10-16)
■BauXar EarPhone M(2011-10-10)
■SONOCORE COA-803(2011-10-02)
◆TripleFi 10 ROOTHリモールド(2011-09-25)

■AKG K3003(2011-09-18)
■Atomic Floyd SuperDarts+Remote(2011-09-11)
■Bowers & Wilkins C5(2011-09-06)
■Westone3(2011-09-02)
◆カナルワークスCW-L31(2011-08-26)

◇ORB JADE to go(2011-08-22)
■YAMAHA EPH-100(2011-08-14)
■NW-STUDIO(2011-08-09)
■NW-STUDIO PRO(2011-08-02)
◆FitEar MH334(2011-07-29)

◆ROOTH SE530×8(2011-07-26)
■Westone ES5(2011-07-21)
●SHURE SRH940(2011-07-17)
◆Ultimate Ears 18 Pro(2011-07-15)
■クリエイティブAurvana In-Ear3(2011-07-06)

◆カナルワークス CW-L01(2011-07-01)
■GRADO GR10&GR8(2011-06-25)
◇SAEC(サエク)SHURE SE用ケーブル(2011-06-21)
■フィアトンPS 20&PS 210(2011-06-17)
■ZERO AUDIO ZH-BX500&ZH-BX300(2011-06-11)

■フィリップスSHE8000&SHE9000(2011-06-03)
■アトミック フロイド(2011-05-26)
■モンスター・マイルス・デイビス・トリビュート(2011-05-20)
■SHURE SE215(2011-05-13)
■ファイナルオーディオデザインPiano Forte IX(2011-05-06)

■ラディウス・ドブルベ/ドブルベ・ヌメロドゥ(2011-05-01)
■ローランドRH-PM5(2011-04-23)
■フィリップスSHE9900(2011-04-15)
■JAYS q-JAYS(2011-04-08)
◇フォステクスHP-P1(2011-03-29)

■Klipsch Image X10/X5(2011-03-23)
■ファイナルオーディオデザインheaven(2011-03-11)
■Ultimate Ears TripleFi 10(2011-03-04)
■Westone4(2011-02-24)
■Etymotic Research ER-4S(2011-02-17)

■KOTORI 101(2011-02-04)
■ゼンハイザーIE8(2011-01-31)
■ソニーMDR-EX1000(2011-01-17)
■SHURE SE535(2011-01-13)
■ビクターHA-FXC51(2011-01-12)
この記事をツイート

この記事の関連情報

*

TREND BOX

編集部おすすめ

ARTIST RANKING

アーティストランキング

FEATURE / SERVICE

特集・サービス