【BARKS編集部レビュー】カナルワークスCW-L10から放たれる“元気よくロックを鳴らす”2ウェイの潔さ

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国産カスタムIEMを製作するブランドのカナルワークスから、CW-L10という新製品が発表されたのが2011年10月半ばだった。そこで紹介されていたCW-L10の説明文にしびれ、見事に喰らいついてしまった。「馬力のあるドライバーでベストチューニングを施し“元気よくロックを鳴らす”というコンセプト」というのだ。んなもん、気に入るに決まっとるがな。

◆CW-L10画像

▲今回の指定は、シェルはクリアで、フェイスプレートにヘアラインアルミプレートを指定、その上にアルミのCWエンブレムを載せた。

カナルワークスは、カラーからプラグ形状、エンブレムに至るまで、自由度の高い豊富なオーダー幅を持つ国内随一のカスタムIEMブランドだが、2010年10月に2ウェイ3ドライバーのCW-L11からブランドはスタート、翌年春にはER-4Sに低域を追加したような切れ味鋭いフルレンジのCW-L01と、4つのドライバーを搭載したフルスペックCW-L31をラインナップに加え、人気を博してきた。

そして半年後、今回打ち出してきたのがこのCW-L10である。ドでかい低域用ドライバーと高域用ドライバーの2ウェイ2ユニットという、カスタムIEMの原型とでも言うべきスペックで登場してきたのは、なかなかの不意打ちだった。

2011年はカスタムIEMの認知も急速に広がりはじめたカスタム元年だが、究極のイヤホンという性格上、華やかなハイエンドモデルにスポットが当てらてることも多く、ドライバーの搭載数が価格に直結する製品特性もあって、搭載ドライバー数がそのまま音の良さを表わしているものと思われる傾向にある。2ウェイ2ドライバーというスペックだけで見下されてしまう危惧がある状況下だけに、不意打ちに感じたわけだ。

実は、カスタムIEMの世界において、あらゆるサウンドをカバーする都合のよいモデルなどというのは存在しない。求めるサウンドによって特性は変わり、最良のサウンドを出す設計へモデファイされるため、各モデルはより強い個性と尖ったキャラを持つようになる。これはオリンピック選手にも似て、100m選手とマラソン選手の肉体が全く違うのと同じだ。トップアスリートは競技に最適化された肉体を持ち、その世界で究極のパフォーマンスを見せる。カスタムIEMも究極の最適化の道を歩むべく設計されており、筋肉の量が多ければそれで良しというものではない。ちなみに、バスケもテニスもサッカーも華麗にこなし、走りもジャンプも抜群という学校1の身体能力を持ったクラスの人気者は、いわば市販されている各ブランドのハイエンドモデルといったところだろうか。

リモールドによるカスタムIEM化や、さらにドライバー追加サービス、ハイブリッドの登場など、カスタムIEMの世界も世界規模で急速に活発化している中にあって、今回カナルワークスが放った最新アイテムCW-L10は、シンプルな設計で電気系パーツと音響系パーツを十分に吟味しサウンドを追い込むという、オーディオ追求の王道を真正面から切り込んだものだ。

▲低域用ドライバーは大型。タイトで引き締まった低音を叩き出す。

▲右が4ドライバーのCW-L31、右が2ドライバーCW-L10。

▲どちらも2ウェイ2ドライバー。左がUE 5 Pro、右がCW-L10。

▲ペリカンケース、取説、クリーニングキット、袋、試聴用アダプタなどが付属する。

「ロックのアリーナでの臨場感をエネルギッシュに再現する」というのがメーカーが掲げる当モデルのコンセプトだが、CW-L10のサウンドは、滑舌の良い音というか、くっきりはっきりとサウンドを耳に届けてくれるので、音そのものに説得力があり音楽の表現力を増してくれるような楽しさを生んでくれる。歯擦音が耳に刺さったり、低域がボワっと音像をマスキングしたりするようなアンバランスさは皆無で、その上で量感たっぷりの突き上げるような低域も心地よいし、シャキッとした引き締まった高域の伸びも極上だ。バランスも見事だがクールなモニター的ではなく、とにかく力強くパワフルにメリハリのある鳴らし方をするモデルである。

なお、4ドライバーのCW-L31と比較すると、基本トーンは同じ方向性だと感じるが、ドライバー構成の違いなのかCW-L31のサウンドがみっちりと詰まった濃厚な感じであり、CW-L10はもっとソリッドなサウンドでもある。ここは単に好みの問題だが、コストパフォーマンスという意味ではCW-L10の方が圧倒的だと思うし、私だったら例え同じ価格でもCW-L10の方を選ぶ。こちらの方がサウンドに迷いがないというか、タイトな量感のある低域と十分に煌びやかな高域を何に阻まれることなくストレートに耳へ届けてくれる心地よさがあるからだ。

蛇足ながら最近特にお気に入りのUltimate EarsのUE 5 Proとは、奇遇にも同じ構成を持っている。ドライバーの型番はマスクされており詳細は不明だが、大型の低域用ドライバーと小型の中高域用ドライバーの王道とも言える組み合わせで、サウンドも非常に似ていて好敵手と言える立ち位置にある。UE 5 proの方がシャープで鮮やかな華やかさがあり、カナルワークスのCW-L10の方が、さらに迫力のローが野太く出る特性があるようだ。

今、私の耳は2wayのカスタムIEMサウンドがどうにも心地よく、その魅力に取り憑かれている状況でもあり、ぜひこの機会にCW-L10の魅力をお伝えしたかった。シンプルだからこそごまかしのきかないサウンドで、研ぎ澄まされたトーンの美しさを100%受け取ることができると思う。なお、現在2wayのカスタムIEMを国内外にて同時製作しているので、手元に届き聴き込みが終わり次第、順次ご紹介したいとも思っている。

text by BARKS編集長 烏丸

●カナルワークス CW-L10
2011年10月29日発売
64,800円(税込:モニター販売価格)
※耳型採取費用を含む
構成:バランスドアーマチュア方式(高域×1、低域×1)
インピーダンス:17Ω
感度:110dB
ケーブル長:115cm
プラグ:ステレオミニプラグ
付属品:ハードケース、ソフトケース、ワックスクリーニングツール、クリーニングクロス

◆カナルワークス CW-L10オフィシャルサイト
◆フジヤエービック・サイト
◆e☆イヤホン・サイト

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