高額なイヤホン/ヘッドホンやカスタムIEMのような個人の好みを突き詰める世界を見聞きしていると、十人十色の好みがあり理想自体が千差万別の「音」の世界においては、「万人が満足するイヤホンなんて存在しないんだ」という事実に突き当たる。

◆OSTRY KC06画像

とは言え、それでも「買って得した!」と多くの人が満足を得られるような「最大公約数的なサウンド」を低価格ながら高品質に実現している、いわゆる“出来のいいイヤホン”も確実に存在するわけで、そのような商品をひとつずつ探り当て、しっかりと実力を検証しその魅力を少しでも多くの人に伝えたいという思いも、当レビューコラム連載目的のひとつだったりする。

▲OSTRY KC06。市場価格は7500~8000円程度だが、素晴らしいバランスのサウンドを聞かせてくれる。
 
 
 
 
 
▲金属筐体ではなさそうだがハウジングの質感は悪くない。非常に軽量でコンパクトなため、耳の小さめな女性でもオススメできる。

▲付属品は、サウンド特性の違う2タイプのイヤーチップが計6セット、イヤーハンガー、ケーブルクリップ、キャリングポーチ、保証書。

ということで、以前紹介したAstrotec AX35やRHA MA750などもその一例だけど、今回はOSTRYのKC06をご紹介しよう。販売価格が8000円を切りながらも素晴らしいパフォーマンスを持った、是非とも注目して欲しいイヤホンのひとつだ。

OSTRY(オストライ)は中国から登場した新しいブランドで、KC06はダイナミックドライバーが1発搭載されたシンプルな構造を持つモデルだ。耳にケーブルをかけるように装着するいわゆるSHURE掛けでも、下に垂らす通常のかけ方のどちらでもフィットするデザインで、私の耳にはいずれもしっくりとハマり、カナル型イヤホンとして必要十分な遮音性も簡単に実現してくれた。

素晴らしいのは「全ての面で調和がとれている」ところで、KC06はサウンド/装着感/遮音性/タッチノイズの少なさ/デザイン…と、評価すべき様々なポイントをいずれも足を引っ張ることなくさらっとクリアし、これといった欠点が見当たらない。どこから見ても美しいバランスを保ち、それでいてこの安価を実現しているところが何より凄い。そして付属品を含むパッケージなども、決して高級な質感ではないものの6ピースものイヤーチップや携帯用のキャリング用の巾着袋、ケーブルを止めるクリップなど、過不足ない付属品の選定具合が、これまた絶妙な充足感を与えてくれる。

サウンドは、非常にオープンでニュートラルだ。風通しの良い鳴りっぷりをみせるので、第一印象からネガティブな印象を持つ人は少ないのではないだろうか。低域の存在感もありながら高域の爽やかさも十分で、健やかな透明感も感じさせてくれるヘルシーなサウンドが実に心地よい。中域もモタれる感じはなく、ボーカルのレスポンスにも不満はないので、そのまま自然に音楽に没頭させてくれる懐の深さすら感じてしまう。カリカリの解像度を主張するような押し付けがましさもないので、気軽に音楽を楽しませてくれるようなイヤホンだ。

さて、どんな人にKC06をお薦めするべきか。すばり「クリアで美しい音だけど、すべての帯域でパワフルであって欲しい。でもできるだけ安く(笑)」というわがままなリクエストに、真正面から応えてくれるがKC06だと思う。

一方で、逆に言えばKC06にしかないという音の特徴を持っていないのが最大のウィークポイントで、3万円を超えるような高級イヤホンを手にするようになると、全て80点のお行儀の良さに面白さを感じなくなる可能性もあるだろう。疲れるけどバカみたいに解像度が高いとか、遮音性だけは誰にも負けないとか、極端な低域お化けとか、個性で評価されるタイプとは真逆なキャラクターであることは、知っておいた方がいい。

そもそもオーディオテクニカやソニーのようなブランド力はほとんどないし、一般的に8000円のイヤホンなんて完全なる高級エリアなので、一般の人がたまたま購入したなどということはまずないだろう。けれど、「ここらで一発、確実に満足できる“いいイヤホン”が欲しい…でも後悔は絶対したくない」と考えている人はたくさんいる。イヤホンマニアが個性派を漁るのではなく、一点集中の万能型を1万円以内で購入したいという要望であれば、KC06などは打って付けの第一候補となるはずだ。

予算1万円あたりのイヤホン界は、個性派と万能型が交錯する、いわば親潮前線と黒潮前線が交わる混合域だったりするので、買い物は非常に難しいエリアだ。皆が皆、専門ショップや大型電器店でイヤホンの視聴ができるわけでもないので、ネット上での評判やレビューを参考にするしかないことも多いのだけど、自分の理解と書き手の感覚のズレを吸収しないと正しく情報を得られないために、理想とはかけ離れたものを手にしてしまう火傷を負うリスクが付きまとう。せめて大雑把に個性派なのか、万能型なのかだけでも分かるといいのだけれど、現実は玉石混淆のウェブ情報を元に、乱立する個性派の中から万能型をあぶり出すのはなかなか難儀なことだ。

万能型優等生のOSTRY KC06は、長い間使い続けることで、使えば使うほど安定した音質に信頼度が増してくることも分かったが、一方でイヤーチップでサウンドが変わりやすいという特徴もある。イヤーチップの大きさや材質によってトーンが変わってしまうデリケートな要素があるので、逆に様々なチップに交換してみることは、KC06を新鮮な気持ちで末永く楽しむためのちょっとした裏ワザにもなりそうだ。

text by BARKS編集長 烏丸哲也

●OSTRY KC06
オープン価格(市場価格7,500円前後)
・ドライバー:10mmダイナミック
・感度:110db/mW
・インピーダンス:16Ω
・再生周波数帯域:20~25,000Hz
・コード長:1.35mm
・プラグ:ステレオミニプラグ(Ф3.5mm)
・カラー:シルバー、シャンパンゴールド(限定版)
・イヤホンタイプ:カナル
・付属品:キャリングポーチ×1、シリコン製のイヤーチップ(中高域強化)大中小×各1セット、シリコン製のイヤーチップ(標準タイプ)大中小×各1セット、保証書1枚

◆OSTRY KC06オフィシャルサイト
◆BARKSヘッドホン・チャンネル
◆BARKS カスタムIEM専門チャンネル


BARKS編集長 烏丸レビュー(■イヤホン ●ヘッドホン ◆カスタムIEM ◇他)
◆VISION EARS VE6 Xcontrol(2014-05-18)
■Fidue A81(2014-05-17)
◆カナルワークスCW-L32(2014-05-04)
■アルティメットイヤーズUE900s(2014-04-26)
■Astrotec AX60&AX35(2014-04-20)

◆CUSTOM ART Pro 330v2(2014-04-13)
●MPC Headphones(2014-04-06)
●Klipsch STATUS(2014-03-30)
●SMS Audio STREET by 50 DJ Pro Performance Headphones(2014-03-23)
◆AK240×カスタムIEM(2014-03-16)

■RHA MA750(2014-03-09)
■Meze 11 Deco(2014-03-02)
◇Astell&Kern AK240(2014-02-22)
◆1964 EARS V6-Stage(2014-02-17)
◆カナルワークスCW-L32V(2014-02-09)

◇EarPeace HD(2014-02-02)
◆Noble Audio Kaiser 10(2014-01-19)
◆Clear Tune Monitors CT-300Pro(2014-01-04)
◇KLIPSCH KMC1(2014-01-01)
■DUNU DN-1000(2013-12-30)

◆Ultimate Ears Reference Monitors(2013-12-16)
◆Ultimate Ears 11 Pro(2013-12-08)
◆earmo Tune5(2013-12-03)
●オーディオテクニカATH-OX7AMP(2013-11-23)
■音茶楽Donguri-欅(KEYAKI)(2013-11-17)

■オーディオテクニカ ATH-IM01~04(2013-10-27)
◇Astell&Kern AK10(2013-10-25)
●フィリップス Fidelio M1(2013-10-22)
◆earmo Tune4(2013-10-12)
◆Ultimate Ears Personal Reference Monitors(2013-10-05)

◆Sensaphonics 2XS(2013-09-30)
■Earsonics SM64(2013-09-23)
◆LIVEZONER41 LZ12(2013-09-15)
◆Ultimate Ears カスタムIEM全7機種(2013-09-08)
◆null audio Elpis(2013-09-03)

■FitEar Parterre(2013-08-25)
◆カナルワークスCW-L12(2013-08-17)
◆Livezoner41 LZ 4(2013-08-06)
■SHURE SE846(2013-08-02)
■オーリソニックスASG-2 with BassPort(2013-07-28)

■Hippo ProOne(2013-07-21)
◆カナルワークス CW-L51a(2013-07-13)
■EXS X10(2013-06-24)
■音茶楽Flat4シリーズ粋、楓、玄(2013-06-17)
◆LEAR LCM-1F(2013-06-10)

◇Ultimate Ears UEブーム(2013-05-28)
◇Stage93 93PC(2013-05-20)
●Meze Headphones(2013-05-08)
●Fischer Audio Jubilate(2013-04-29)
◇ORB JADE casa(2013-04-21)

◆lime ears LE3(2013-04-14)
◇雑誌「DigiFi 第10号」付録(2013-04-06)
●Ultimate Ears UE 9000、UE 6000、UE 4000(2013-04-01)
■開放型インナーイヤーイヤホンおススメ5モデル(2013-03-19)
◆LEAR LCM-5(2013-03-16)

●フィリップスFidelio L1(2013-02-25)
○スマホが与えた音楽リスニングのモラル変革(2013-02-17)
■Klipsch Image X7i(2013-02-04)
◆LEAR(2013-01-27)
◆カナルワークスCW-L05QD(2013-01-13)

◆earmo(2013-01-02)
◆Westone AC2(2012-12-25)
◇Stage93 93SPEC(2012-12-16)
●California Headphone Silverado、Laredo(2012-12-09)
■音茶楽Flat4-楓(2012-12-03)

◆Stage93 Stage 6(2012-11-26)
●GRADO SR60i(2012-11-19)
◇Astell&Kern AK100-32GB-BLK(2012-11-15)
●オーディオテクニカ ATH-WS99(2012-11-10)
■アトミック フロイドPowerJax+Remote(2012-10-29)

◇VORZUGE VorzAMPduo(2012-10-26)
●ファイナルオーディオデザイン heaven VI(2012-10-16)
●beyerdynamic T 90(2012-10-08)
●GRADO GS1000i(2012-09-30)
●SENNHEISER HD 700(2012-09-16)

◆ACS T1 Live!(2012-09-11)
●オーディオテクニカ ATH-AD2000 ATH-AD1000(2012-09-03)
●GRADO RS1i、SR325is、PS500(2012-08-20)
◆FitEar MH335DW(2012-08-15)
●DIESEL VEKTR(2012-08-07)

◆カナルワークスCW-L51 PSTS(2012-07-30)
●Fischer Audio FA-002W(2012-07-25)
●Pioneer SE-MJ591(2012-07-16)
■GRADO iGi(2012-07-12)
●HiFiMAN HM-400(2012-06-26)

●Klipsch Reference One(2012-06-17)
●GRADO PS1000(2012-06-09)
●ULTRASONE edition 8(2012-06-02)
●PHONON SMB-02(2012-05-28)
■音茶楽Flat4-粋(SUI)(2012-05-20)

●<春のヘッドフォン祭2012>、Fischer Audio FA-004(2012-05-13)
◇Hippo Cricri、Go Vibe Martini+、VestAmp+(2012-05-04)
■ファイナルオーディオデザインheaven IV(2012-04-28)
■フィッシャー・オーディオ Jazz (2012-04-22)
●SHURE SRH1840 & SRH1440(2012-04-16)

■FitEar TO GO! 334(2012-04-08)
◆Unique Melody Mage(2012-03-26)
●Takstar PRO 80、HI 2050、TS-671(2012-03-20)
●klipsch Mode M40(2012-03-15)
■Fischer Audio DBA-02 Mk2(2012-03-07)

◆AURISONICS AS-1b(2012-02-27)
■UBIQUO UBQ-ES503、UBQ-ES505、UBQ-ES703(2012-02-21)
◆Heir Audio Heir 3.A(2012-02-15)
■moshi audio Clarus(2012-02-12)
◆Thousand Sound TS842(2012-02-08)

◆Heir Audio Heir 8.A(2012-02-01)
■CRESYN(2012-01-17)
◆Unique Melody Merlin(2012-01-08)
◆カナルワークスCW-L01P(2012-01-03)
■ファイナルオーディオデザイン Adagio(2011-12-31)

◆LEAR LCM-2B(2011-12-26)
●SOUL by Ludacris SL100、150、300(2011-12-23)
●AKG K550(2011-12-20)
■SENNHEISER IE80 & IE60(2011-12-16)
■DUNU(2011-12-14)

◆カナルワークスCW-L10(2011-12-12)
■オーディオテクニカ ATH-CK90PROMK2(2011-12-09)
◆Ultimate Ears UE 5 Pro(2011-12-06)
■REALM IEM856(2011-12-02)
■ファイナルオーディオデザインAdagio III(2011-11-26)

◇Ultimate Ears用交換ケーブルFiiO RC-UE1&オヤイデ電気HPC-UE(2011-11-25)
●Reloop RHP-20(2011-11-22)
■オーディオテクニカ ATH-CK100PRO(2011-11-14)
■SOUL by Ludacris SL99(2011-11-04)
■Fischer Audio Ceramique(2011-10-25)

■SHURE SE535 Special Edition(2011-10-21)
■JVCケンウッドHA-FX40(2011-10-16)
■BauXar EarPhone M(2011-10-10)
■SONOCORE COA-803(2011-10-02)
◆TripleFi 10 ROOTHリモールド(2011-09-25)

■AKG K3003(2011-09-18)
■Atomic Floyd SuperDarts+Remote(2011-09-11)
■Bowers & Wilkins C5(2011-09-06)
■Westone3(2011-09-02)
◆カナルワークスCW-L31(2011-08-26)

◇ORB JADE to go(2011-08-22)
■YAMAHA EPH-100(2011-08-14)
■NW-STUDIO(2011-08-09)
■NW-STUDIO PRO(2011-08-02)
◆FitEar MH334(2011-07-29)

◆ROOTH SE530×8(2011-07-26)
■Westone ES5(2011-07-21)
●SHURE SRH940(2011-07-17)
◆Ultimate Ears 18 Pro(2011-07-15)
■クリエイティブAurvana In-Ear3(2011-07-06)

◆カナルワークス CW-L01(2011-07-01)
■GRADO GR10&GR8(2011-06-25)
◇SAEC(サエク)SHURE SE用ケーブル(2011-06-21)
■フィアトンPS 20&PS 210(2011-06-17)
■ZERO AUDIO ZH-BX500&ZH-BX300(2011-06-11)

■フィリップスSHE8000&SHE9000(2011-06-03)
■アトミック フロイド(2011-05-26)
■モンスター・マイルス・デイビス・トリビュート(2011-05-20)
■SHURE SE215(2011-05-13)
■ファイナルオーディオデザインPiano Forte IX(2011-05-06)

■ラディウス・ドブルベ/ドブルベ・ヌメロドゥ(2011-05-01)
■ローランドRH-PM5(2011-04-23)
■フィリップスSHE9900(2011-04-15)
■JAYS q-JAYS(2011-04-08)
◇フォステクスHP-P1(2011-03-29)

■Klipsch Image X10/X5(2011-03-23)
■ファイナルオーディオデザインheaven(2011-03-11)
■Ultimate Ears TripleFi 10(2011-03-04)
■Westone4(2011-02-24)
■Etymotic Research ER-4S(2011-02-17)

■KOTORI 101(2011-02-04)
■ゼンハイザーIE8(2011-01-31)
■ソニーMDR-EX1000(2011-01-17)
■SHURE SE535(2011-01-13)
■ビクターHA-FXC51(2011-01-12)