悲劇と成功の歴史を越え10作目『X』リリース! 2人のギタリストが語るバンドの真実

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悲劇と成功の歴史を越え、10作目『X』リリース!
2人のギタリストが語るバンドの真実

VH1の番組『Behind The Music』をよく観る人なら知っていることだが、英国シェフィールド出身のトップアーティスト、Def Lepperdほど、そのキャリアを通じて困難や悲運に次々と見舞われたバンドは滅多にない。そのうえ、生き残って『Storytellers』で自分達の物語を語れるバンドとなれば、さらに少数だ。『Behind The Music』で取り上げられた中でも、BanglesやQuiet Riotのように意志薄弱なバンドは、一緒にやっていけないからという単純な理由で分裂した。しかし、Leppardは2人のオリジナル・ギタリストを失い(Pete Willisはアルコール中毒が原因で解雇。Steve Clarkは過度の飲酒により死亡)、ドラマーのRick Allenがひどい交通事故で片腕を失ったにもかかわらず、しぶとくロックし続けた。魅力的なロンドンっ子、Phil CollenがWillisの後釜に入り、元DioWhitesnakeのベテラン、Vivian Cambellが亡きClarkの後を埋め、Allenは片腕のドラムプレイを習得。そして今、Def Leppardがスタートして25年が過ぎ、10枚目のアルバム『X』(ローマ数字の10)がリリースされた。

数々の試練をくぐり抜けてきたバンドだけに、彼らの音楽も、あのLeonard CohenがAquaに聴こえるくらい荒涼としたものと思われがちだ。でも、よく考えてみてほしい。'99年に『Euphoria』という絶妙なタイトル(訳注:Euphoriaは幸福感という意味)の作品でカムバックしたDef Leppardである。『X』では「You're So Beautiful」や「Four Letter Word」といった、ビール広告の快楽主義を誇る超お気楽なロックナンバーを披露し、「Rock Of Ages」や「Pour Some Sugar On Me」、ユニオンジャックTシャツ世代の賛歌「Photograph」のような名曲をミックスした魅力に溢れている。また、とにかくキャッチーで明るい「Unbelievable」というナンバーもあって、これは*NSYNCBackstreet BoysBritney Spearsなどのスマッシュヒットを量産するスウェーデンのヒットファクトリー、CheironのAndreas CarlssonとPer Aldenheinが曲作りとプロデュースを手掛けているのだが、それでもなおDef Leppard的なサウンドであることに変わりはない。

LAUNCH編集長、Lyndsey Parkerは先日、サン・フェルナンド・ヴァレーのリハーサル会場でCollenとCampbellをキャッチ。2人は面白いと評判のショウに磨きをかけている最中だったが、その休憩の合い間に、ロック界で最も悲劇と成功に満ちた歴史の中で彼らが演じた役柄についてインタヴューした。

 

Boy Georgeと会ったのが'83年だったってことは憶えてる。で、俺達はというと未だ健在なわけだ!

最新アルバム


UNIVERSAL INTERNATIONAL
2002年5月30日発売
UICS-1040 2,548 (tax in)

1 Now
2 Unbelieveable
3 You're So Beautiful
4 Everyday
5 Long Long Way To Go
6 Four Letter Word
7 Torn To Shreds
8 Love Don't Lie
9 Gravity
10 Cry
11 Girl Like You
12 Let Me Be The One
13 Scar
14 Kiss The Day*
15 Long Long Way To Go(Acoustic)*

*ボーナス・トラック



Dioにいたときは歌わせてもらえなかった!

――2人ともDef Leppardのオリジナル・メンバーではないですよね。最初に参加したときはどんな感じでした? 自分がバンドの方向性を変えたと思いますか?

PHIL:えーと、俺が加入したのは20年前。曲は全部出来上がっていた。もともと連中のことは知ってたんだ。前にもJoeに、Ozzyのツアーに来てくれないかと頼まれたことがあってね。オリジナル・ギタリストのPete Willisが、ちょっと酒で問題あるからって。当時俺はGirlってバンドにいたけど、Joeが「3日間で16曲おぼえられるかい?」って訊くから、「もちろん!」と答えたよ。でも、そのときはそれだけ。Joeが電話してきて、「もう大丈夫、何もかもうまくいくようになった。Peteは完全にシラフに戻ったし、最高だ」って。 それから2年くらいたって、また電話がかかってきた。「もう一度考えてくれるかな? Peteがまた変になってさ。もうやつには出ていってもらうことにした。それでソロが弾ける人間を探しているんだ。どうしてもギタープレーヤーが2人必要なんだよ」。というわけで、とりあえず出向いていって、「Stagefright」のソロを最初に弾いた。続けて「Photograph」「Foolin'」「Rock Of Ages」。あとは歌をちょっとやって、それでそのアルバム制作は完了。誰も気づいてはいなかったけど、結局ツアーのリハーサルをやってたってわけさ(笑)!

つまり、俺はまだ正式なメンバーではなかったけど、サポートは始めていたことになる。最初のギグはロンドンのMarquee Clubだった。それから渡米してBilly Squierの前座をやった。そのツアー中に何もかもが一気に巻き起こったんだ。まるで核爆発みたいにね。あっという間の出来事だった。Marquee Clubでプレイしてたのが、次の瞬間、スタジアムだよ。そりゃいい気分だった。バンドを変えたという意味では、俺がヴォーカルもできたというのは変化の1つになったかな。それ以前も連中はコーラスをやりたがっていたけど、あまり上手くなかったんだ。Steveはよく歌うフリをしてたんだよ! Pete Willisもきちんとは歌えなかったね。それからヴォーカル・アレンジで有名な(長年スーパースター・プロデューサーであり共作者である)Mutt Langeと共同制作することになった。それでいろんなことが変わったね。それに自分が加わって、よりアグレッシブになった。それまでのプレイは少し軽すぎると思ってたんだ。クールだけどね。でも少し軽かった。


――Vivian、あなたはどうでした?

VIVIAN:自分は“ほんの”10年前にメンバーに加わったんだけどね。

――つまり“Ron Wood”みたいな気がするということ? 自分はもう何年もバンドにいるのに、未だに新メンバーみたいな?

VIVIAN:その通りだよ。未だに自分は“新メンバー”だからね。バンドに入ったのは『Adrenalize』のレコーディングの後で、2回目のギグはWembley StadiumのFreddie Marcuryエイズ啓蒙コンサートだった。でも、その3、4日前にダブリンのクラブでショウをやって、最初からすごくいい感じだったんだ。その過程が心地好かった。Joeはダブリンに住んでいたから、もともと知り合いだったし、共通の友人も多いよ。

――Steve Clarkの後釜ということで不快な思いをしたことはなかったんですね?

VIVIAN:うん、全く感じなかった。Steveが死んで1年がたって、彼らはようやくアルバムを完成させ、全員がとにかく後釜を探そうという気になっていたんだ。自分のほうも問題はなかった。自分はうってつけだと思っていたよ。ずっとバンドのファンだったからね。その昔、「Rocks Off」や「Wasted」がシングルでリリースされたときに買ってたくらいだから、このバンドはすごく近い存在だった。まさに自分にぴったりだと思ったよ。それにSteveと違って自分は歌うのが好きだからね! 自分にもっとヴォーカルをやらせてくれるバンドを望んでたんだ。Dioにいたときは、バックコーラスを歌いたくても歌わせてもらえなかった! 「ギタープレイヤーはギターを弾き、シンガーは歌をうたう。Ritchie Blackmoreがバックコーラスを歌ったことあるか? Tony Iommiが歌ったか? つまらないことは考えずにギターを弾いてくれ」って彼に言われてね。でも、歌は自分にとってそれ以上のものなんだ。どっちかというと、いわゆるロックものよりも、ヴォーカルやポップ・ミュージックのほうに興味があるくらいさ。

'90年代の自分達は全然“クール”じゃなかったのさ

――Matt LangeはどのぐらいDef Leppardの音楽に貢献しているんですか? 彼を6人目のメンバーと呼んでいる人も多いようですが……

PHIL:彼は最高だよ。彼の存在はとても大きい。(ぶ厚いヴォーカルは)すべて彼のアイデアだった。『Hysteria』によって新しいレベルに到達したんだ。「Rocket」も「Pour Some Sugar On Me」も……すべてがそのための蓄積だった。そこで初めて俺達は本当のスターになったんだ。だってR&Bバンドから*NSYNCBackstreet Boysといったポップグループまで、みんなが俺達をコピーし始めたからね。バックヴォーカルの多重録音ってやつさ。Queenも同じことをしてたけど、やり方が違った。Muttはまさにそれを最大限に駆使して、全く新しいスタイルを作り上げたんだ。

――あなた達とMuttはスタジオにかける時間が長いことでも有名になりましたよね。

PHIL:うん、『Pyromania』は11ヵ月。『Hysteria』はいろいろ問題があって長い時間を費やした。Rickが事故にあったりして、いったい全体、自分達が何をやってるかさえ分からなくなったんだ。でも、今は技術が進んでるから助かるよ。プロの機材は俺達にとってまさに“ああ、神様ありがとう”みたいなものさ。今はだいたい1枚のアルバム制作に1年だから、他のみんなと変わらないと思うよ。

――'96年の『Slang』はそれまでと全く違いますよね。もっとずっと荒削りで、剥き出しのままというか、いつものあなた方のレベルからするとローファイとも言えそうですが……

PHIL:ああ、あれを出せてよかったよ。自分では傑作だと思ってる。とても創意に富んだアルバムだ。スタイル自体がそれまでとは違ったのさ。ただ曲を書いて録音する、それで終わり。その次のアルバム(『Euphoria』)では、みんなが昔ながらのDef Leppardを聴きたがっているだろうと考えたんだ。(『Euphoria』を)今聴き返すと、悪くはないけど、多少ミスったところもあると思う。それで今回のアルバムは、みんなが何と呼ぶかは知らないけど、いわば自分達のキャリアの集大成だと思っているんだ。ちょうど程よい完成度とでもいうのかな。

――『Slang』はあまり評判がよくなかったように記憶していますが……

PHIL:うーん、当時は曲調が暗くて哀れな感じだったからね。なんとか“クール”にしようと試みたんだけど。当時のアーティストはみんな何とかして、クールで苦悩するイメージを作ろうとしていた。けど、それができる本物のバンドはほんの2、3しかいなかったんだ。たとえばNirvanaはすばらしかった。限りなくリアルだった。つまり、'90年代の自分達は全然“クール”じゃなかったのさ。そのときの自分達は反キリストみたいなもんだった。みんな俺達を見ては「これこそまさに自分達が反対しているものだ!」と言ってたよ。それで俺達は『Slang』を傑作だと思ったけど、みんなは「違うよ、僕らはDef Leppardを聴きたいんだ」と言うわけ。「前回、まさにDef Leppardっていうアルバム('92年の『Adrenalize』)を作ったときは嫌ってたくせに!」って感じだったね。

――『Slang』を作ったことを後悔していると?

PHIL:そうじゃない! あれはよく出来てるよ。もし、あの作品を作っていなかったら、今この地点に到達していないからね。それに、中には素晴らしい曲もある。真摯な、というか、ベーシックで非常に大胆な曲作りがなされているんだ。“Def Leppard的なこと”をしなかったところが大胆だったね。

本当のJoeはいつだって浮かれてるようなやつなんだから

――自分達は'80年代のヘアーメタル・バンドと一緒に扱われすぎてきたとは思いませんか?

PHIL:ああ、すべてのバンドとひとまとめにされてきたけど、実際は全く自分達とは関係なかった。俺達にとって常に重要なのは本質――つまり音楽であって、イメージがどうこうというのではないんだ。

――でも、初期の成功はイメージなくしてはなかったわけですから、それは認めないと。あなた方はMTVを通して最初にブレイクしたハードロックバンドの1つですよね。MTVがあんなに影響力があると思っていましたか?

PHIL:ああ、俺達は喜んでそのチャンスを受け入れたよ。どれほどの影響力があるかはわからなかったけど、自分達はクールに映ると思ってた。実際はクールには見えなかったけど、そう見えると思ったんだ。だから自分達の姿を出そうと考えた。「俺達ってクールだろ、他のやつらよりもクールだろ、俺達は違うんだ、ほら見てよ! 俺達のほうが若いし、全然イケてるだろ」ってね。本当にそう思ってたのさ! 全部がウソじゃなかったしね。俺達みたいなバンドは少なかったし。大抵は「音楽がすべてだ。ヴィジュアルは関係ない」って感じ。でも、明らかに時代は変わっていた。みんなはヴィジュアル的にも刺激を求めていたんだよ。

――まるで一回りしてもとの場所に戻ったような感じですね。最初はMTVでブレイクし、リバイバルはVH1で経験したわけですから。最近のDef LeppardはVH1のハウスバンド化していると言ってもいいくらいです。VH1の伝記番組『Hysteria:The Def Leppard Story』についてはどう思いました?

PHIL:面白いことにさ、VH1はいろんなことを調べ上げてはいるんだけど、人物のアイデンティティとか個性とかが全く抜け落ちてるんだ。俺達全員にインタヴューしたんだから、我々のキャラクターも多少は押さえてるはずだけど、全体像がつかめてない。『Pet Semetary』って映画を知ってるだろ? 動物を生き返らせても、その動物には魂がないっていう……まるでそんな感じさ。俺達は確かにそこにいるけど、魂が感じられないんだ!

――あの番組ではヴォーカルのJoe Elliottをバンドの独裁者のように描いていましたが、実際はそんなことないでしょう?

PHIL:全然! 彼のあのキャラクターは酷すぎるよ。すごく陰気で気難しくてさ。本当の彼は全然あんなんじゃない。いつだって浮かれてるようなやつなんだから。

いい音なら、それでいいんだ。Linkin Parkはすごいと思う

――'90年代には反動に見舞われましたが……『Hysteria』ほど驚異的なヒットアルバムを出した後というのは、Alanis MoressetteHootie&Blowfishのシンドロームと同じだと思いませんか? つまり、『Hysteria』が1700万枚も売れたおかげで、次のアルバムはたとえ700万枚売れたとしても、「失敗」と見なされてしまうわけです。

PHIL:なぜ次のアルバムがあまり上手くいかないか、分かるよね? 自分以外の人間がみんなそのサウンドをパクるからさ。アルバムが大ヒットすると、みんながそれをコピーする。まるで自分の次作を他のアーティストが先に作ってしまうようなもんなんだ。だから、AlanisがNatalie Imbrugliaやそういうパクリ連中の後に新譜を出すと、「ああ、もうウンザリだよ、お前なんか! こんなのもう聴きたくねぇ!」って言われてしまう。Alanisは何も間違っていないし、ただ自分の音楽をやってるだけなんだけどね。考えすぎかもしれないけど、他のアーティストが自分達のサウンドを消費しきってしまうこともある、ということは意識しておかないと。それが『Hysteria』のときにわかったことだよ。

――サウンドのパクリということで言うと、最近流行りのニューメタルについてはどう見ていますか?

PHIL:いい音なら、それでいいんだ。Linkin Parkはすごいと思う。

VIVIAN:Linkin Parkは(『X』のレコーディング中に)スタジオでずいぶん参考にしたよ。歌えるやつがいて、曲を書けるやつがいて、すごくクールな音作りがされてる。そういうのだったら聴けるってことさ。おっと、俺、年寄りくさいこと言ってる!

PHIL:いや、その通りだよ。そういうバンドは数少ない。過大評価されてるのかもしれないけど……“俺達は'80年代からずっとリードギター・プレイヤーズとしてやってきた。未だに現役で、自分達のスタイルを持っていて、そのサウンドは悪くもないし時代遅れでもない、と思ってる。これは俺達にとって幸運なことだよね。だって自分と同じ時代に出てきたプレーヤーのほとんどは、プレイを聴いてすごくいいと思っても、どうしようもなく時代遅れなんだから! 中にはギタープレイとは呼べないようなのもたくさんあったし、楽曲も酷ければ歌も聴くに堪えなかった!

VIVIAN:そう、確かにYngwie Malmsteenは驚異的だけど、俺にはとても聴いてられない! 昔も聴けなかったけどさ! でも、昔はああいう風になりたいと思っていたんだ。「どうしたら同じように弾けるだろう」と思って練習に励んだのを憶えてるよ。でも、それからしばらくたってわかった。「ああ、できないわけだ。だって本当はやりたいと思ってないんだもの。心から好きなわけじゃないんだ」って。今になって、子供の頃に避けていたギタリストの作品を聴くようになったよ。当時はあまり“テクニカル”だと思わなかったんだ。Dave GilmourEric Claptonみたいなプレイヤー達のことさ。彼らがすごいのにはそれなりの理由があるのに! ほんのちょっと弾いただけで彼らだってわかるだろ。それが質の高さの表れなんだ。ところが、'80年代にはラジオから流れてくる曲のギターソロを聴いても、「ふーん、どれも同じだな」って感じだった。

PHIL:彼らはただ目立っていただけで、曲はどうでもよかったんだ。でも俺達は、ただみんなを感心させようと思ってやったわけじゃない。自分達自身がファンになれるくらいじゃないと。自分達で聴いてクールだと思えなければダメってことさ。

――『Euphoria』は随分あちこちに喰い込んで、ゴールドアルバムにもなり、あなた方の曲が再びラジオで流れるようになりましたね。現在の音楽界の状況は、『X』で再び返り咲くための機が熟していると思いますか? 近頃のチャートの中味は種種雑多ですよね。KylieからStrokesDavid GrayOutKastまで何でもありで。

VIVIAN:確かに音楽はすごく多様化してるけど、残念なことにみんなの耳に届く手立てはむしろ少なくなっている。みんなに知ってもらうのはものすごく大変なことなんだ。作品の良し悪しは関係ないし、マスメディアに載らなければ認知されない。今でも僕に向かって、「へぇ、まだ解散してないんだ」って言う人はいるよ。Def Leppardがずっと活動を続けてることを知らないんだ。僕達の音楽を聴く機会がないからさ。

――あなた方はありとあらゆる局面を乗り越え、様々なトレンドの盛衰を目の当たりにしてきたわけですよね。自分達がいったい何年このバンドをやってきたのか、わけが分からなくなるんじゃないですか? もう20年以上になりますから……

PHIL:まったくだね。いくつか節目みたいなものはあって、例えばBoy Georgeと会ったのが'83年だったってことは憶えてる。で、俺達はというと未だ健在なわけだ! あのちょっとした出来事が19年も前のことだと思うと、頭がおかしくなりそうだけどね。

By Lyndsey Parker (C)LAUNCH.com

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