【BARKS編集部レビュー】NOBLE AUDIO Kaiser 10 universal、このサウンドは「奇跡」

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こ、これは凄い。マジで凄い。正直な話、カスタムIEMのKaiser 10(以降K10)を初めて聴いた時のインパクトを軽く上回る衝撃。凄い音すぎて、賞賛以外の言葉が出ない。

◆NOBLE AUDIO、Kaiser 10 universal画像

こいつはNOBLE AUDIOのKaiser10ユニバーサル。つまりは、名実ともに世界トップクラスのカスタムIEMであるK10を、一般的なイヤホンとして作り変えたものだ。耳型採取することなく誰でも気軽に使えるように、汎用ハウジングに収めてイヤーピースを付けたカナル型イヤホン版のK10である。

▲Kaiser10ユニバーサル。誰でも使える一般的なイヤホン形状で新登場となった。
▲カナル部分は3ボアだが、低域用の音導管は非常に細く作られており、アコースティックローパス構造を持っていることが分かる。
▲真っ黒に写ってしまっているが、ブラックに非常に細かなブルーのラメが入ったミッドナイト・ブルー・スパークルという日本市場向け限定カラー。フェイスプレートトップにはNOBLE AUDIOロゴがエンボス状に入っている。
▲右ハウジング内側には、ウィザードデザインを示すWizardのロゴが刻印されている。
▲どちらもK10。左がカスタム、右がユニバーサル。同じドライバーが入っているとは思えないほど大きさが違う。
▲ハウジングの大きさ比較。左からK10、NOBLE FR、FitEar TO GO! 334、fitear parterre。K10が驚くほど小さくまとめられていることがお分かりだろうか。
▲付属品はコンパクトなハードケース、4種類各3サイズのイヤーチップ類、クリーニングブラシ、ギャランティーカード、シリコンベルト。ステッカーはブランドロゴの形をした新しいデザインのものが2枚入っていた。

耳型を基にオーダーメイドで作られるカスタムIEMの場合、3Dパズルのように自分の耳の形にピタっと密着する構造によって、優れた遮音性とともに、理想的な音伝達環境が形成される。低域の再現性や劣化しない中高域の伝達効率は圧倒的で、誰もが聴けるように用意されたイヤーピース付きの試聴機と実際作られたカスタムIEMとの間には、超えられないサウンド・クオリティの壁がある。ユニバーサルモデルとは、構造的にまさに試聴機と同じであるから、そのサウンドクオリティはK10カスタム≧K10ユニバーサルであると決め込んでいた。「どれほどカスタムに近付けられるものか、あの音が気軽に楽しめるならそれは画期的だな」という期待と好奇心で、K10ユニバーサルを手にしたわけである。

結論から言えば、K10カスタムとK10ユニバーサルは違うサウンドだった。カスタムIEMのK10を一生懸命ユニバーサル化したものではなく、むしろK10の名に恥じないユニバーサルが別途設計されたものと理解したほうがしっくりくる。両者のサウンドには明確な違いがあり、どちらもお互いの代わりになるものではなく、一方があればそれでよしというものでもなかった。

K10ユニバーサルの方が音像がタイトで硬質、低域の鳴りっぷりがクリアで明確なため、分かりやすく頭蓋骨を刺激する。その量感はカスタムよりも強い印象さえ受けるほどだ。一方で、音と音の間の空間は究極のクリアさが実現されており、音の響きを阻害する成分が見当たらない。音の背景が広大な3Dで、すべての音がお互いに干渉せずにのびのびと鳴るさまは、カスタム版をも凌駕する。どの帯域も主張は激しいがお互いにマスキングしてしまうようなわがままさは皆無…この見事な統制は、もう奇跡と言っていいのではないか。

とにかく鮮やかな音で、そのトーンはきめ細かく新鮮で瑞々しい。一聴しただけで「うわ、いい音!」と度肝を抜き、そのまま聴き続けてもそのインパクトは全く風化しない。常々私は「いいと思う音を探す」よりも「いいと思う自分のコンディションを探す」ことに片足の軸を置いているのだけれど、時間経過とともに「いつまでもいい音」が失われず、むしろ心地よさが増してくるこの感覚は、まさしくドーパミン神経系…いわゆる報酬系を適切に刺激する音色の黄金比を持ち得ているのかも…とすら思ってしまう。「恐ろしいほどいい音がする」…これがK10ユニバーサルに対する素直な感想だ。

強烈な低域と驚異的に伸びる高域は特筆すべきポイントだが、決してドンシャリではない。前に出てくるボーカル域のリアリティも驚異的だが、かまぼこサウンドというわけでもない。いわゆるフラットなバランスかと言われれば「まあ、そうだけど…」と答えるわけだが、とにかく全域のリアルさが驚異的で、すべての帯域の音がなんの妨げなく耳に届く様が驚異なのだ。圧倒的な情報量を持っているにもかかわらず、エッジは立っているわけではないので、疲れは全く生じないのも経験のない聴き心地につながっている。

見方を変えれば、この感動的なサウンドは「アクティブ回路で駆動しているかのよう」とも表現できる。全帯体域にわたってエネルギーみなぎるプッシュ感をもっているので、そのエネルギッシュな鳴りっぷりは、単なるパッシブ回路で実現されているとは信じがたい質感でもある。もはやドライバーの数の問題でもなく、やはりサウンドデザインのセンスの問題なのだろう。オーナーのWizardの名の通り、本当に魔法がかかっているのでは…とすら言いたくなる。

低位がはっきりしており、全ての音と位置関係が明確に把握できる形で音空間が構成されるため、その中に身を通じてライブ空間で没頭するような楽しみ方もできるし、俯瞰で音楽そのものを理知的に堪能するような聞き方も簡単にできる。単なるイヤホンにあらず、本当の意味で音楽再生機としての高い品質を持った、エポックメイクな音楽再現ツールでもあろう。

世のカナル型イヤホンの品質基準をあっさりと書き換え、とんでもないハイレベルに更新してしまったことは、今後誕生する新製品にも少なからずの影響を与えることだろう。イヤホン界の地殻変動/時代の変わり目にはいつもWizardがいるような気がする。

K10ユニバーサルは、K10カスタムよりもキビキビとしたシャープさとスピード感を感じさせるトーンなので、むしろカスタムよりユニバーサルのほうが好きという人もいるだろう。遮音性と装着感の点で私はカスタム愛用派なのだけれど、K10ユニバーサルのサウンドは忘れがたい。こうなったらK10ユニバーサルのサウンドを再現したカスタムK10Ver2を出してくれ…って、言っていること変ですか?

text by BARKS編集長 烏丸哲也

●NOBLE Audio Kaiser 10 Universal Midnight Blue Sparkle
2014年10月25日(土)日本先行発売(本国11月1日発売)
\179,800(税込)【初回入荷分限定価格】※通常販売価格¥189,800(税込)
・日本用ミッドナイト・ブルー・スパークル特別カラー
・precision tuned低域ドライバx2
・precision tuned中域ドライバx2
・precision tuned中高域ドライバx2
・precision tuned高域ドライバx2
・precision tuned超高域ドライバx2
・4ウェイ・デザイン
・インピーダンス Ω35
・着脱可能ケーブル業界標準2ピン

◆NOBLE AUDIO Kaiser 10 Universalオフィシャルサイト
◆NOBLE AUDIOオフィシャルサイト(海外)
◆BARKSヘッドホン・チャンネル
◆BARKS カスタムIEM専門チャンネル


BARKS編集長 烏丸レビュー(■イヤホン ●ヘッドホン ◆カスタムIEM ◇他)
◆カナルワークスCW-L71PSTS(2014-10-12)
■UCOTECH IL300 affetto(2014-10-05)

◆rhines stage 4U(2014-09-28)
●ROCK JAW ACERO(2014-09-21)
◆Westone ES60(2014-09-14)
■Astrotec Lyra(2014-09-08)
■NOBLE FR(WIZARD)(2014-08-26)

■Fidue A83(2014-08-19)
◇Musician's Ear Plugs(2014-08-10)
◆Noble Audio 5C R Configuration(2014-07-27)
◆FitEar萌音-MONET(2014-07-21)
■SHURE SE112(2014-07-13)

■Blue Ever Blue 878(2014-07-01)
■茶楽音人Donguri-楽(RAKU)(2014-06-24)
■オーディオテクニカATH-CKR10(2014-06-14)
◇estron Music、BaX(2014-06-03)
●OSTRY KC06(2014-05-18)

◆VISION EARS VE6 Xcontrol(2014-05-25)
■Fidue A81(2014-05-17)
◆カナルワークスCW-L32(2014-05-04)
■アルティメットイヤーズUE900s(2014-04-26)
■Astrotec AX60&AX35(2014-04-20)

◆CUSTOM ART Pro 330v2(2014-04-13)
●MPC Headphones(2014-04-06)
●Klipsch STATUS(2014-03-30)
●SMS Audio STREET by 50 DJ Pro Performance Headphones(2014-03-23)
◆AK240×カスタムIEM(2014-03-16)

■RHA MA750(2014-03-09)
■Meze 11 Deco(2014-03-02)
◇Astell&Kern AK240(2014-02-22)
◆1964 EARS V6-Stage(2014-02-17)
◆カナルワークスCW-L32V(2014-02-09)

◇EarPeace HD(2014-02-02)
◆Noble Audio Kaiser 10(2014-01-19)
◆Clear Tune Monitors CT-300Pro(2014-01-04)
◇KLIPSCH KMC1(2014-01-01)
■DUNU DN-1000(2013-12-30)

◆Ultimate Ears Reference Monitors(2013-12-16)
◆Ultimate Ears 11 Pro(2013-12-08)
◆earmo Tune5(2013-12-03)
●オーディオテクニカATH-OX7AMP(2013-11-23)
■音茶楽Donguri-欅(KEYAKI)(2013-11-17)

■オーディオテクニカ ATH-IM01~04(2013-10-27)
◇Astell&Kern AK10(2013-10-25)
●フィリップス Fidelio M1(2013-10-22)
◆earmo Tune4(2013-10-12)
◆Ultimate Ears Personal Reference Monitors(2013-10-05)

◆Sensaphonics 2XS(2013-09-30)
■Earsonics SM64(2013-09-23)
◆LIVEZONER41 LZ12(2013-09-15)
◆Ultimate Ears カスタムIEM全7機種(2013-09-08)
◆null audio Elpis(2013-09-03)

■FitEar Parterre(2013-08-25)
◆カナルワークスCW-L12(2013-08-17)
◆Livezoner41 LZ 4(2013-08-06)
■SHURE SE846(2013-08-02)
■オーリソニックスASG-2 with BassPort(2013-07-28)

■Hippo ProOne(2013-07-21)
◆カナルワークス CW-L51a(2013-07-13)
■EXS X10(2013-06-24)
■音茶楽Flat4シリーズ粋、楓、玄(2013-06-17)
◆LEAR LCM-1F(2013-06-10)

◇Ultimate Ears UEブーム(2013-05-28)
◇Stage93 93PC(2013-05-20)
●Meze Headphones(2013-05-08)
●Fischer Audio Jubilate(2013-04-29)
◇ORB JADE casa(2013-04-21)

◆lime ears LE3(2013-04-14)
◇雑誌「DigiFi 第10号」付録(2013-04-06)
●Ultimate Ears UE 9000、UE 6000、UE 4000(2013-04-01)
■開放型インナーイヤーイヤホンおススメ5モデル(2013-03-19)
◆LEAR LCM-5(2013-03-16)

●フィリップスFidelio L1(2013-02-25)
○スマホが与えた音楽リスニングのモラル変革(2013-02-17)
■Klipsch Image X7i(2013-02-04)
◆LEAR(2013-01-27)
◆カナルワークスCW-L05QD(2013-01-13)

◆earmo(2013-01-02)
◆Westone AC2(2012-12-25)
◇Stage93 93SPEC(2012-12-16)
●California Headphone Silverado、Laredo(2012-12-09)
■音茶楽Flat4-楓(2012-12-03)

◆Stage93 Stage 6(2012-11-26)
●GRADO SR60i(2012-11-19)
◇Astell&Kern AK100-32GB-BLK(2012-11-15)
●オーディオテクニカ ATH-WS99(2012-11-10)
■アトミック フロイドPowerJax+Remote(2012-10-29)

◇VORZUGE VorzAMPduo(2012-10-26)
●ファイナルオーディオデザイン heaven VI(2012-10-16)
●beyerdynamic T 90(2012-10-08)
●GRADO GS1000i(2012-09-30)
●SENNHEISER HD 700(2012-09-16)

◆ACS T1 Live!(2012-09-11)
●オーディオテクニカ ATH-AD2000 ATH-AD1000(2012-09-03)
●GRADO RS1i、SR325is、PS500(2012-08-20)
◆FitEar MH335DW(2012-08-15)
●DIESEL VEKTR(2012-08-07)

◆カナルワークスCW-L51 PSTS(2012-07-30)
●Fischer Audio FA-002W(2012-07-25)
●Pioneer SE-MJ591(2012-07-16)
■GRADO iGi(2012-07-12)
●HiFiMAN HM-400(2012-06-26)

●Klipsch Reference One(2012-06-17)
●GRADO PS1000(2012-06-09)
●ULTRASONE edition 8(2012-06-02)
●PHONON SMB-02(2012-05-28)
■音茶楽Flat4-粋(SUI)(2012-05-20)

●<春のヘッドフォン祭2012>、Fischer Audio FA-004(2012-05-13)
◇Hippo Cricri、Go Vibe Martini+、VestAmp+(2012-05-04)
■ファイナルオーディオデザインheaven IV(2012-04-28)
■フィッシャー・オーディオ Jazz (2012-04-22)
●SHURE SRH1840 & SRH1440(2012-04-16)

■FitEar TO GO! 334(2012-04-08)
◆Unique Melody Mage(2012-03-26)
●Takstar PRO 80、HI 2050、TS-671(2012-03-20)
●klipsch Mode M40(2012-03-15)
■Fischer Audio DBA-02 Mk2(2012-03-07)

◆AURISONICS AS-1b(2012-02-27)
■UBIQUO UBQ-ES503、UBQ-ES505、UBQ-ES703(2012-02-21)
◆Heir Audio Heir 3.A(2012-02-15)
■moshi audio Clarus(2012-02-12)
◆Thousand Sound TS842(2012-02-08)

◆Heir Audio Heir 8.A(2012-02-01)
■CRESYN(2012-01-17)
◆Unique Melody Merlin(2012-01-08)
◆カナルワークスCW-L01P(2012-01-03)
■ファイナルオーディオデザイン Adagio(2011-12-31)

◆LEAR LCM-2B(2011-12-26)
●SOUL by Ludacris SL100、150、300(2011-12-23)
●AKG K550(2011-12-20)
■SENNHEISER IE80 & IE60(2011-12-16)
■DUNU(2011-12-14)

◆カナルワークスCW-L10(2011-12-12)
■オーディオテクニカ ATH-CK90PROMK2(2011-12-09)
◆Ultimate Ears UE 5 Pro(2011-12-06)
■REALM IEM856(2011-12-02)
■ファイナルオーディオデザインAdagio III(2011-11-26)

◇Ultimate Ears用交換ケーブルFiiO RC-UE1&オヤイデ電気HPC-UE(2011-11-25)
●Reloop RHP-20(2011-11-22)
■オーディオテクニカ ATH-CK100PRO(2011-11-14)
■SOUL by Ludacris SL99(2011-11-04)
■Fischer Audio Ceramique(2011-10-25)

■SHURE SE535 Special Edition(2011-10-21)
■JVCケンウッドHA-FX40(2011-10-16)
■BauXar EarPhone M(2011-10-10)
■SONOCORE COA-803(2011-10-02)
◆TripleFi 10 ROOTHリモールド(2011-09-25)

■AKG K3003(2011-09-18)
■Atomic Floyd SuperDarts+Remote(2011-09-11)
■Bowers & Wilkins C5(2011-09-06)
■Westone3(2011-09-02)
◆カナルワークスCW-L31(2011-08-26)

◇ORB JADE to go(2011-08-22)
■YAMAHA EPH-100(2011-08-14)
■NW-STUDIO(2011-08-09)
■NW-STUDIO PRO(2011-08-02)
◆FitEar MH334(2011-07-29)

◆ROOTH SE530×8(2011-07-26)
■Westone ES5(2011-07-21)
●SHURE SRH940(2011-07-17)
◆Ultimate Ears 18 Pro(2011-07-15)
■クリエイティブAurvana In-Ear3(2011-07-06)

◆カナルワークス CW-L01(2011-07-01)
■GRADO GR10&GR8(2011-06-25)
◇SAEC(サエク)SHURE SE用ケーブル(2011-06-21)
■フィアトンPS 20&PS 210(2011-06-17)
■ZERO AUDIO ZH-BX500&ZH-BX300(2011-06-11)

■フィリップスSHE8000&SHE9000(2011-06-03)
■アトミック フロイド(2011-05-26)
■モンスター・マイルス・デイビス・トリビュート(2011-05-20)
■SHURE SE215(2011-05-13)
■ファイナルオーディオデザインPiano Forte IX(2011-05-06)

■ラディウス・ドブルベ/ドブルベ・ヌメロドゥ(2011-05-01)
■ローランドRH-PM5(2011-04-23)
■フィリップスSHE9900(2011-04-15)
■JAYS q-JAYS(2011-04-08)
◇フォステクスHP-P1(2011-03-29)

■Klipsch Image X10/X5(2011-03-23)
■ファイナルオーディオデザインheaven(2011-03-11)
■Ultimate Ears TripleFi 10(2011-03-04)
■Westone4(2011-02-24)
■Etymotic Research ER-4S(2011-02-17)

■KOTORI 101(2011-02-04)
■ゼンハイザーIE8(2011-01-31)
■ソニーMDR-EX1000(2011-01-17)
■SHURE SE535(2011-01-13)
■ビクターHA-FXC51(2011-01-12)
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