【BARKS編集部レビュー】音楽好きであればこそ、Musician's Ear Plugsのススメ

twitterツイート

イヤホン/ヘッドホンのレビューを始めてかれこれ3年半が経つ。感動的な音色との出会いや驚きのサウンド体験など、未だ学ぶことや得ることは多々あるわけだれど、その中でも大きな感銘を受けた経験のひとつにMusician's Ear Plugsとの出会いがある。これは単なる耳栓で、音が出るイヤホンなどではないのだけれど、こればかりは体験した人間じゃないとわからないことだらけと思い、いつかは紹介しなくちゃいけないと考えていたアイテムのひとつだ。

◆Musician’s Ear Plugs画像

Musician's Ear Plugsは、言わば耳栓である。しかも耳栓のくせに制作に3万円もする。は?っと目を疑う値段だと思う。そもそも興味もないところにこの価格とあれば、もはや話題にすら上がらないのも仕方ない。正直なところ、そもそも私自身も耳栓などには全く興味もなかったし、必要性を感じたこともなかった。

▲センサフォニクス製Musician's Ear Plugs。
でも、今の私は全く違う。「一生付き合っていかなくてはいけない自らの聴力を、簡単に守ることができる」ことを実感しているからだ。その安心と信頼が得られることを考えると、たった3万円なのはむしろ画期的なことだとも思っている。

今では、コンサートやライブ会場、飛行機や電車、騒音の大きい場所などで、Musician's Ear Plugsは欠かせない。これによって、耳への過度な刺激から守ることができ、常に健康な聴覚状態を維持できるようになった。長時間のコンサートに身をおいても耳鳴りの発生は一切なくなったし、聴覚上の疲れを感じることもなくなった。いつでもデリケートな試聴やサウンドチェックもできるし、高度安定の聴覚コンディションをキープすることもできるようになった。とても小さな音量で、音楽の持つ豊潤な情報量を受け取ることができるようになったことで、自らの許容ダイナミックレンジが大きく広がるという、お金では買えない効能をも手にすることができた。

2014年5月に執筆したコラム記事(◆【BARKS編集部コラム】~将来音楽が生まれなくなる?~ミュージシャンの耳が危ない)で触れたとおり、耳へのケアが足りないことによる難聴のリスクを抱えている人は、現代社会に非常に多いという。問題は大きな音を聴き続けていることで「大きな音を大きいと感じなくなる脳の働き」に惑わされ、「聴覚細胞を傷つけてしまうほどの大音量にさらされていることに気付かない」点にある。

▲耳型を採取し、その形で本人専用の耳栓を制作するため、カスタムIEMと同様、自分しか使えない自分専用の耳栓となる。青が左、赤が右で、色点を下にして耳穴へはめると、ピッタリと耳穴にフィットし最高の遮音を作り出す。この心地よさは、普通の耳栓とは別次元。
▲別売のフィルターを交換することで遮音レベルを調整できる。
▲用意されているのは9デシベル、15デシベル、25デシベルカットできる3種類。私は最も遮音性能の高い25dbカットのフィルターを常用している。
▲状況によってフィルターを簡単に交換できるよう、小さな袋に小分けして持ち歩いている。
▲付属品はキャリングポーチ。
この悪循環のスパイラルを断ち切るには、「音楽を大音量で聴かない」というルールを守ればいいのだけれど、それは簡単なことではない。誰しも好きな音楽は存分に心地よく聴きたいわけで、我慢して小さな音で聴くなんて、そもそも本末転倒なことでもある。大事なのは「小さな音でも音楽のダイナミズムは十分に堪能できることを実体験すること」だと、私は思う。そのために大事なのが余計なノイズを低減させる遮音の大切さだ。自らの環境をできるだけ静かなものにすることによって、危険の少ない低いレベルで音楽を存分に楽しむことができるようになる。大音量の環境に身を置かないようにすることで、普段楽しむ音楽の絶対音量は驚くほど下がってくる。

過度の騒音による聴力障害は今や世界的な問題で、職業上の騒音による聴力損失障害は16%に及ぶと言われているが、近年のクラブやイヤホンでの音楽鑑賞によって19%もの若者が過剰な音量にさらされている危険な状況にあるのだとか。ある統計によると、ポータブルプレイヤーで音楽を楽しんでいる人々の5~10%が聴覚損失のリスクを伴う状態にあると指摘されている。まして、曲作り、スタジオでのリハーサル、レコーディング、ステージなど、常識外の大音量にさらされる機会の多いミュージシャンであればこそ、被爆量を抑える耳栓の使用は積極的に利用しなくてはいけない。

Musician's Ear Plugsはセンサフォニクス製の耳栓で、最大の特徴は耳型を採取し外耳道にピッタリとフタをするように制作される点にある。柔らかいシリコン製のため、はめても耳への違和感はほとんどなくまるで身体の一部のようでストレスは全く感じない。そのまま耳にはめると非常に高い遮音性が確保されるのだけれど、それでは周りの音がほとんど聞こえなくなってしまうわけで、Musician's Ear Plugsにはわざと穴が貫通しており、その穴に専用のフィルターをはめることで遮音量を調節することができる。このフィルターが実に優秀で、トーンバランスを崩すことなく音量をコントロールすることができるようになっている。ここがミュージシャンに向けて開発された重要なポイントだ。それこそ普通の耳栓では会話すらできないものだけど、Musician's Ear Plugsは付けたままでも問題なく普通のコミュニケーションが取れる。耳に入ってくる周波数帯のバランスが崩れないからだ。

いわゆる一般的な耳栓は、単に音を遮るだけで、漏れ聞こえてくる音はもこもこしていたり細かいニュアンスは全くわからないものだが、Musician's Ear Plugsはトーンバランスが崩れず、音楽が音楽として耳へ入ってくる。「音を聞くときに耳栓を使うなんて意味不明」という感想はごもっともだが、Musician's Ear Plugsは“耳栓”ではなく、ボリュームを下げるコントローラーとして“サウンド・アッテネーター”と呼ばれるべきミュージシャン必携のアイテムなのだ。そして、ライブ好きなオーディエンスにも耳の健康をキープしてくれる最高の相棒になる。

高額なMusician's Ear Plugsを手にする前に、まずは手軽な耳栓を手に入れてコンサート時の爆音を抑えてみるのもいいだろう。ただし、やはり安価な耳栓はサウンドバランスがめちゃくちゃになることが多く、音楽を楽しむという点では欠陥だらけだったりするので、耳栓を使用する気も失せてしまうことだろう。音楽を楽しめなくなるものを好き好んで付ける人なんていないからだ。

Musician's Ear Plugsは、音楽を存分に楽しめませてくれる、奇跡の聴覚の救世主だと思う。確かに高額だけれど、余りある効能を提供してくれることは、少なくとも私は実践で確認済み。大切な聴覚を失わないためにも、どうか真剣に検討してみて欲しいものと願っている。

text by BARKS編集長 烏丸哲也

●Musician's Ear Plugs
価格:\28,000(税込価格30,240円)+耳型採取料(税込5,400円)
別売フィルター1ペア(税込7,344円)

◆Musician's Ear Plugsオフィシャルサイト
◆BARKSヘッドホン・チャンネル
◆BARKS カスタムIEM専門チャンネル


BARKS編集長 烏丸レビュー(■イヤホン ●ヘッドホン ◆カスタムIEM ◇他)
◆Noble Audio 5C R Configuration(2014-07-27 )
◆FitEar萌音-MONET(2014-07-21)
■SHURE SE112(2014-07-13)

■Blue Ever Blue 878(2014-07-01)
■茶楽音人Donguri-楽(RAKU)(2014-06-24)
■オーディオテクニカATH-CKR10(2014-06-14)
◇estron Music、BaX(2014-06-03)
●OSTRY KC06(2014-05-18)

◆VISION EARS VE6 Xcontrol(2014-05-25)
■Fidue A81(2014-05-17)
◆カナルワークスCW-L32(2014-05-04)
■アルティメットイヤーズUE900s(2014-04-26)
■Astrotec AX60&AX35(2014-04-20)

◆CUSTOM ART Pro 330v2(2014-04-13)
●MPC Headphones(2014-04-06)
●Klipsch STATUS(2014-03-30)
●SMS Audio STREET by 50 DJ Pro Performance Headphones(2014-03-23)
◆AK240×カスタムIEM(2014-03-16)

■RHA MA750(2014-03-09)
■Meze 11 Deco(2014-03-02)
◇Astell&Kern AK240(2014-02-22)
◆1964 EARS V6-Stage(2014-02-17)
◆カナルワークスCW-L32V(2014-02-09)

◇EarPeace HD(2014-02-02)
◆Noble Audio Kaiser 10(2014-01-19)
◆Clear Tune Monitors CT-300Pro(2014-01-04)
◇KLIPSCH KMC1(2014-01-01)
■DUNU DN-1000(2013-12-30)

◆Ultimate Ears Reference Monitors(2013-12-16)
◆Ultimate Ears 11 Pro(2013-12-08)
◆earmo Tune5(2013-12-03)
●オーディオテクニカATH-OX7AMP(2013-11-23)
■音茶楽Donguri-欅(KEYAKI)(2013-11-17)

■オーディオテクニカ ATH-IM01~04(2013-10-27)
◇Astell&Kern AK10(2013-10-25)
●フィリップス Fidelio M1(2013-10-22)
◆earmo Tune4(2013-10-12)
◆Ultimate Ears Personal Reference Monitors(2013-10-05)

◆Sensaphonics 2XS(2013-09-30)
■Earsonics SM64(2013-09-23)
◆LIVEZONER41 LZ12(2013-09-15)
◆Ultimate Ears カスタムIEM全7機種(2013-09-08)
◆null audio Elpis(2013-09-03)

■FitEar Parterre(2013-08-25)
◆カナルワークスCW-L12(2013-08-17)
◆Livezoner41 LZ 4(2013-08-06)
■SHURE SE846(2013-08-02)
■オーリソニックスASG-2 with BassPort(2013-07-28)

■Hippo ProOne(2013-07-21)
◆カナルワークス CW-L51a(2013-07-13)
■EXS X10(2013-06-24)
■音茶楽Flat4シリーズ粋、楓、玄(2013-06-17)
◆LEAR LCM-1F(2013-06-10)

◇Ultimate Ears UEブーム(2013-05-28)
◇Stage93 93PC(2013-05-20)
●Meze Headphones(2013-05-08)
●Fischer Audio Jubilate(2013-04-29)
◇ORB JADE casa(2013-04-21)

◆lime ears LE3(2013-04-14)
◇雑誌「DigiFi 第10号」付録(2013-04-06)
●Ultimate Ears UE 9000、UE 6000、UE 4000(2013-04-01)
■開放型インナーイヤーイヤホンおススメ5モデル(2013-03-19)
◆LEAR LCM-5(2013-03-16)

●フィリップスFidelio L1(2013-02-25)
○スマホが与えた音楽リスニングのモラル変革(2013-02-17)
■Klipsch Image X7i(2013-02-04)
◆LEAR(2013-01-27)
◆カナルワークスCW-L05QD(2013-01-13)

◆earmo(2013-01-02)
◆Westone AC2(2012-12-25)
◇Stage93 93SPEC(2012-12-16)
●California Headphone Silverado、Laredo(2012-12-09)
■音茶楽Flat4-楓(2012-12-03)

◆Stage93 Stage 6(2012-11-26)
●GRADO SR60i(2012-11-19)
◇Astell&Kern AK100-32GB-BLK(2012-11-15)
●オーディオテクニカ ATH-WS99(2012-11-10)
■アトミック フロイドPowerJax+Remote(2012-10-29)

◇VORZUGE VorzAMPduo(2012-10-26)
●ファイナルオーディオデザイン heaven VI(2012-10-16)
●beyerdynamic T 90(2012-10-08)
●GRADO GS1000i(2012-09-30)
●SENNHEISER HD 700(2012-09-16)

◆ACS T1 Live!(2012-09-11)
●オーディオテクニカ ATH-AD2000 ATH-AD1000(2012-09-03)
●GRADO RS1i、SR325is、PS500(2012-08-20)
◆FitEar MH335DW(2012-08-15)
●DIESEL VEKTR(2012-08-07)

◆カナルワークスCW-L51 PSTS(2012-07-30)
●Fischer Audio FA-002W(2012-07-25)
●Pioneer SE-MJ591(2012-07-16)
■GRADO iGi(2012-07-12)
●HiFiMAN HM-400(2012-06-26)

●Klipsch Reference One(2012-06-17)
●GRADO PS1000(2012-06-09)
●ULTRASONE edition 8(2012-06-02)
●PHONON SMB-02(2012-05-28)
■音茶楽Flat4-粋(SUI)(2012-05-20)

●<春のヘッドフォン祭2012>、Fischer Audio FA-004(2012-05-13)
◇Hippo Cricri、Go Vibe Martini+、VestAmp+(2012-05-04)
■ファイナルオーディオデザインheaven IV(2012-04-28)
■フィッシャー・オーディオ Jazz (2012-04-22)
●SHURE SRH1840 & SRH1440(2012-04-16)

■FitEar TO GO! 334(2012-04-08)
◆Unique Melody Mage(2012-03-26)
●Takstar PRO 80、HI 2050、TS-671(2012-03-20)
●klipsch Mode M40(2012-03-15)
■Fischer Audio DBA-02 Mk2(2012-03-07)

◆AURISONICS AS-1b(2012-02-27)
■UBIQUO UBQ-ES503、UBQ-ES505、UBQ-ES703(2012-02-21)
◆Heir Audio Heir 3.A(2012-02-15)
■moshi audio Clarus(2012-02-12)
◆Thousand Sound TS842(2012-02-08)

◆Heir Audio Heir 8.A(2012-02-01)
■CRESYN(2012-01-17)
◆Unique Melody Merlin(2012-01-08)
◆カナルワークスCW-L01P(2012-01-03)
■ファイナルオーディオデザイン Adagio(2011-12-31)

◆LEAR LCM-2B(2011-12-26)
●SOUL by Ludacris SL100、150、300(2011-12-23)
●AKG K550(2011-12-20)
■SENNHEISER IE80 & IE60(2011-12-16)
■DUNU(2011-12-14)

◆カナルワークスCW-L10(2011-12-12)
■オーディオテクニカ ATH-CK90PROMK2(2011-12-09)
◆Ultimate Ears UE 5 Pro(2011-12-06)
■REALM IEM856(2011-12-02)
■ファイナルオーディオデザインAdagio III(2011-11-26)

◇Ultimate Ears用交換ケーブルFiiO RC-UE1&オヤイデ電気HPC-UE(2011-11-25)
●Reloop RHP-20(2011-11-22)
■オーディオテクニカ ATH-CK100PRO(2011-11-14)
■SOUL by Ludacris SL99(2011-11-04)
■Fischer Audio Ceramique(2011-10-25)

■SHURE SE535 Special Edition(2011-10-21)
■JVCケンウッドHA-FX40(2011-10-16)
■BauXar EarPhone M(2011-10-10)
■SONOCORE COA-803(2011-10-02)
◆TripleFi 10 ROOTHリモールド(2011-09-25)

■AKG K3003(2011-09-18)
■Atomic Floyd SuperDarts+Remote(2011-09-11)
■Bowers & Wilkins C5(2011-09-06)
■Westone3(2011-09-02)
◆カナルワークスCW-L31(2011-08-26)

◇ORB JADE to go(2011-08-22)
■YAMAHA EPH-100(2011-08-14)
■NW-STUDIO(2011-08-09)
■NW-STUDIO PRO(2011-08-02)
◆FitEar MH334(2011-07-29)

◆ROOTH SE530×8(2011-07-26)
■Westone ES5(2011-07-21)
●SHURE SRH940(2011-07-17)
◆Ultimate Ears 18 Pro(2011-07-15)
■クリエイティブAurvana In-Ear3(2011-07-06)

◆カナルワークス CW-L01(2011-07-01)
■GRADO GR10&GR8(2011-06-25)
◇SAEC(サエク)SHURE SE用ケーブル(2011-06-21)
■フィアトンPS 20&PS 210(2011-06-17)
■ZERO AUDIO ZH-BX500&ZH-BX300(2011-06-11)

■フィリップスSHE8000&SHE9000(2011-06-03)
■アトミック フロイド(2011-05-26)
■モンスター・マイルス・デイビス・トリビュート(2011-05-20)
■SHURE SE215(2011-05-13)
■ファイナルオーディオデザインPiano Forte IX(2011-05-06)

■ラディウス・ドブルベ/ドブルベ・ヌメロドゥ(2011-05-01)
■ローランドRH-PM5(2011-04-23)
■フィリップスSHE9900(2011-04-15)
■JAYS q-JAYS(2011-04-08)
◇フォステクスHP-P1(2011-03-29)

■Klipsch Image X10/X5(2011-03-23)
■ファイナルオーディオデザインheaven(2011-03-11)
■Ultimate Ears TripleFi 10(2011-03-04)
■Westone4(2011-02-24)
■Etymotic Research ER-4S(2011-02-17)

■KOTORI 101(2011-02-04)
■ゼンハイザーIE8(2011-01-31)
■ソニーMDR-EX1000(2011-01-17)
■SHURE SE535(2011-01-13)
■ビクターHA-FXC51(2011-01-12)
twitterこの記事をツイート

この記事の関連情報