「最高と思うものを手にしておけば他のモデルに目移りすることもないし、衝動買いも防げるってんで、これが賢いお買い物術」…とばっちゃんが言っていたので、オーディオプレイヤーはAstell&Kernの弩級プレイヤーAK240を愛用している。「これ使ってりゃ、浮気の可能性もなし」と安泰の心持ちだったんですが…世の中に“絶対”ってなものはありませんなぁ。フェラーリ乗っててもポルシェ欲しがるのと一緒なんでしょうか。持ってないので分かりませんけれども。

◆Calyx M画像

ここにあるのは、Digital & Analog社から発売されたハイレゾ・デジタルオーディオプレーヤー、Calyx Mだ。Calyx(カリクス)がブランド名、Mがモデル名となる。

こいつのいいところはたくさんあるが、私が惚れた最大のポイントはひとえにそのサウンドだ。AK240よりも大容量のメモリを載せられる点もいい。内蔵は64GBだけど、SDカードとマイクロSDのスロットが一基ずつ用意され、256GBのSDカードと128GBのmicroSDで最大448GBという大容量を積むことができる。リーズナブルなSDカードが使えるってのも何より嬉しいじゃないか。

ちょっと残念だと思うのは、10万を超える高額であること、ちょいとばっかり大きめ(でかめのスマホ風)であること。正味稼働時間が4~5時間程度であること。

他はいいところばかりだ。最低限の機能、分かりやすい操作性、物理コントローラーの使いやすさ…つまりは音楽を心地よく楽しむことだけに力点が置かれたシンプルな設計思想が、とにかく男前なのだ。余計な機能は考えていない。拡張性にも興味なし。とにかく現存するハイレゾ音源を心地よいサウンドで再生することだけに徹するというコンセプトが潔い。佇まいにブレがないのだ。

肝心のサウンドだが、肉感的でとにかく楽しい。一聴して「いい音だね」というよりも、「お、かっこいい音」と言ってしまうような表情豊かなサウンドで、自然に頬がほころぶ。解像度がめちゃ高いというわけではないが、かつてのアナログステレオのようなあたたかみやドシンと響く重厚な低域、その肌感がいい。手術室のメスのような切れ味のAKシリーズに対し、Calyx Mは木彫りの熊を削りだす職人のノミのような骨太な安心感がある。




Ak240とCalyx Mを聞き比べれば、改めてAK240の品質の高さは疑いようもない。AK240のサウンドは湿度&気温管理の行き届いた非常に居心地の良い最上級のホテルの一室のようで、クリアでスッキリ、透き通るような文句なしの品質を誇っている。一方でCalyx Mの音は、ちょっと寒い部屋でデロンギで暖を取っているようななんとも言えないほっこりする魅力があり、そこから離れたくないなと思わせる魅惑の心地よさがある。こと、楽器の音がなまめかしく温度感ある音がする点がツボで、スタジオで鳴らした時の「生きている音」、あの血の通ったトーンがそのまま鳴っている感覚が伝わってくる。一番の惚れポイントはズバリここだった。

好印象を生む要因には、スライド式のボリュームを始めとした直感的なインターフェイスの良さもあるだろう。再生/停止・次曲・前曲を選ぶボタンも物理コントローラーとして用意されており、このあたりの設計思想はAKシリーズと共通する部分でもある。タッチパネルは基本3画面あり、フリックで3ページを横スワイプ移動する点や、左上に三連ドットアイコンがありそこからサイドメニューを表示することができる点は、スマホ世代には慣れ親しんだもの。昔ながらの使い勝手と現代の機能性がごく自然に融合している設計デザインは、非常によく考えられている。楽曲の登録も付属のUSBケーブルでPCとつなげれば本体をそのまま認識、曲データをドラッグ&ドロップすればそれでOK、曲も自動的に認識してくれる。この辺りの簡便さはAK240、AK100II、AK120IIあたりと同じ操作感覚だ。

USB DUC機能こそあるものの、基本性能は音楽を豊潤に再生し心地よい使用感を追求することに集約されており、そこの割り切りもいい。デジタルアウトもラインアウトもなし、3.5ステレオミニのイヤホンジャックがひとつあるだけで、標準ジャックもなければ流行りのバランスアウトの気配もない。画面を探ってもイコライザーもなければプリセットされた音色の用意もない。Wi-Fi機能も持たないしBluetoothにも未対応だ。これらを欠点とみればスタンドアローンのダサいプレイヤーと言われてしまうところだけれど、そこに無骨な職人のような気概を感じてしまった私には、どでかい図体と稼働時間の短さすら苦笑いで許せてしまう。土日には絶対働かない大飯喰らいの頑固じじい、くらいの認識で、生暖かく見守ろうぢゃないのという心持ちである。

ファームウェアでのバージョンアップでどういう成長を遂げるかも楽しみだが、あくまで音楽を心地よく再生し、ストレスなくライブラリーを楽しむことだけに徹したコンセプトは揺るがないことだろう。今の時点でもシャッフルが完璧に機能しているところや、生々しい低域表現などは、他のプレイヤーでは手に入らない気持ちよさがある。

AK240がカリカリにチューンされたハイスペックサウンドであることは変わらず、ヒリヒリするような高解像度も、すべての帯域をきめ細かく描写してしまう分解能の高さが比類なきハイエンドサウンドであることも、変わりはない。AK240の圧倒的な凄さはCalyx Mが登場したところで全く揺らぐものでもないが、5つ星のフランス料理とはまた違う、絶品カツ丼はいかがですか?というお話だ。

音のいいプレイヤーがほしいという希望にもバッチリ応えてくれるCalyx Mだけれど、AKプレイヤーとの使い分けで贅沢な音楽ライフを謳歌するのもいい。お互いの良さを再認識させてくれる絶妙な愛機になるのではないだろうか。

text by BARKS編集長 烏丸哲也





▲大きさ比較。左からAK240、Calyx M、iPhone6、iPhone5。

●Calyx M

サイズ:W70×H135.5×D14.8mm
重量:230g PCM:384kHz/32bit
DSD:5.6MHz、2.8MHz/1bit(ネイティブ再生)
電池持続時間:5時間
入出力端子:USB入力×1、3.5mmステレオミニ出力×1
メモリ:内蔵64GB/microSDカード×1(最大128GB)/SDカード×1(最大256GB)
◆Calyx Mオフィシャルサイト

◆BARKSヘッドホン・チャンネル
◆BARKS カスタムIEM専門チャンネル

BARKS編集長 烏丸レビュー

■イヤホン ●ヘッドホン ◆カスタムIEM ◇他
■LIVEZONE R4 LZ 4ユニバーサル(2014-12-15)

■ROCK JAW KOMMAND(2014-12-14)
■Donguri-楽 濃茶&鐘(2014-12-08)
■DUNU ALPHA 1(2014-11-30)
■Fidue A71(2014-11-23)
◆AAW M20(2014-11-16)

◆Ultimate Ears UE 7 Pro(2014-11-3)
■絶対失敗しない攻めのサウンド、お薦めイヤホン6品(2014-10-21)
■NOBLE AUDIO Kaiser 10 universal(2014-10-18)
◆カナルワークスCW-L71PSTS(2014-10-12)
■UCOTECH IL300 affetto(2014-10-05)

◆rhines stage 4U(2014-09-28)
●ROCK JAW ACERO(2014-09-21)
◆Westone ES60(2014-09-14)
■Astrotec Lyra(2014-09-08)
■NOBLE FR(WIZARD)(2014-08-26)

■Fidue A83(2014-08-19)
◇Musician's Ear Plugs(2014-08-10)
◆Noble Audio 5C R Configuration(2014-07-27)
◆FitEar萌音-MONET(2014-07-21)
■SHURE SE112(2014-07-13)

■Blue Ever Blue 878(2014-07-01)
■茶楽音人Donguri-楽(RAKU)(2014-06-24)
■オーディオテクニカATH-CKR10(2014-06-14)
◇estron Music、BaX(2014-06-03)
■OSTRY KC06(2014-05-18)

◆VISION EARS VE6 Xcontrol(2014-05-25)
■Fidue A81(2014-05-17)
◆カナルワークスCW-L32(2014-05-04)
■アルティメットイヤーズUE900s(2014-04-26)
■Astrotec AX60&AX35(2014-04-20)

◆CUSTOM ART Pro 330v2(2014-04-13)
●MPC Headphones(2014-04-06)
●Klipsch STATUS(2014-03-30)
●SMS Audio STREET by 50 DJ Pro Performance Headphones(2014-03-23)
◆AK240×カスタムIEM(2014-03-16)

■RHA MA750(2014-03-09)
■Meze 11 Deco(2014-03-02)
◇Astell&Kern AK240(2014-02-22)
◆1964 EARS V6-Stage(2014-02-17)
◆カナルワークスCW-L32V(2014-02-09)

◇EarPeace HD(2014-02-02)
◆Noble Audio Kaiser 10(2014-01-19)
◆Clear Tune Monitors CT-300Pro(2014-01-04)
◇KLIPSCH KMC1(2014-01-01)
■DUNU DN-1000(2013-12-30)

◆Ultimate Ears Reference Monitors(2013-12-16)
◆Ultimate Ears 11 Pro(2013-12-08)
◆earmo Tune5(2013-12-03)
●オーディオテクニカATH-OX7AMP(2013-11-23)
■音茶楽Donguri-欅(KEYAKI)(2013-11-17)

■オーディオテクニカ ATH-IM01~04(2013-10-27)
◇Astell&Kern AK10(2013-10-25)
●フィリップス Fidelio M1(2013-10-22)
◆earmo Tune4(2013-10-12)
◆Ultimate Ears Personal Reference Monitors(2013-10-05)

◆Sensaphonics 2XS(2013-09-30)
■Earsonics SM64(2013-09-23)
◆LIVEZONER41 LZ12(2013-09-15)
◆Ultimate Ears カスタムIEM全7機種(2013-09-08)
◆null audio Elpis(2013-09-03)

■FitEar Parterre(2013-08-25)
◆カナルワークスCW-L12(2013-08-17)
◆Livezoner41 LZ 4(2013-08-06)
■SHURE SE846(2013-08-02)
■オーリソニックスASG-2 with BassPort(2013-07-28)

■Hippo ProOne(2013-07-21)
◆カナルワークス CW-L51a(2013-07-13)
■EXS X10(2013-06-24)
■音茶楽Flat4シリーズ粋、楓、玄(2013-06-17)
◆LEAR LCM-1F(2013-06-10)

◇Ultimate Ears UEブーム(2013-05-28)
◇Stage93 93PC(2013-05-20)
●Meze Headphones(2013-05-08)
●Fischer Audio Jubilate(2013-04-29)
◇ORB JADE casa(2013-04-21)

◆lime ears LE3(2013-04-14)
◇雑誌「DigiFi 第10号」付録(2013-04-06)
●Ultimate Ears UE 9000、UE 6000、UE 4000(2013-04-01)
■開放型インナーイヤーイヤホンおススメ5モデル(2013-03-19)
◆LEAR LCM-5(2013-03-16)

●フィリップスFidelio L1(2013-02-25)
○スマホが与えた音楽リスニングのモラル変革(2013-02-17)
■Klipsch Image X7i(2013-02-04)
◆LEAR(2013-01-27)
◆カナルワークスCW-L05QD(2013-01-13)

◆earmo(2013-01-02)
◆Westone AC2(2012-12-25)
◇Stage93 93SPEC(2012-12-16)
●California Headphone Silverado、Laredo(2012-12-09)
■音茶楽Flat4-楓(2012-12-03)

◆Stage93 Stage 6(2012-11-26)
●GRADO SR60i(2012-11-19)
◇Astell&Kern AK100-32GB-BLK(2012-11-15)
●オーディオテクニカ ATH-WS99(2012-11-10)
■アトミック フロイドPowerJax+Remote(2012-10-29)

◇VORZUGE VorzAMPduo(2012-10-26)
●ファイナルオーディオデザイン heaven VI(2012-10-16)
●beyerdynamic T 90(2012-10-08)
●GRADO GS1000i(2012-09-30)
●SENNHEISER HD 700(2012-09-16)

◆ACS T1 Live!(2012-09-11)
●オーディオテクニカ ATH-AD2000 ATH-AD1000(2012-09-03)
●GRADO RS1i、SR325is、PS500(2012-08-20)
◆FitEar MH335DW(2012-08-15)
●DIESEL VEKTR(2012-08-07)

◆カナルワークスCW-L51 PSTS(2012-07-30)
●Fischer Audio FA-002W(2012-07-25)
●Pioneer SE-MJ591(2012-07-16)
■GRADO iGi(2012-07-12)
●HiFiMAN HM-400(2012-06-26)

●Klipsch Reference One(2012-06-17)
●GRADO PS1000(2012-06-09)
●ULTRASONE edition 8(2012-06-02)
●PHONON SMB-02(2012-05-28)
■音茶楽Flat4-粋(SUI)(2012-05-20)

●<春のヘッドフォン祭2012>、Fischer Audio FA-004(2012-05-13)
◇Hippo Cricri、Go Vibe Martini+、VestAmp+(2012-05-04)
■ファイナルオーディオデザインheaven IV(2012-04-28)
■フィッシャー・オーディオ Jazz (2012-04-22)
●SHURE SRH1840 & SRH1440(2012-04-16)

■FitEar TO GO! 334(2012-04-08)
◆Unique Melody Mage(2012-03-26)
●Takstar PRO 80、HI 2050、TS-671(2012-03-20)
●klipsch Mode M40(2012-03-15)
■Fischer Audio DBA-02 Mk2(2012-03-07)

◆AURISONICS AS-1b(2012-02-27)
■UBIQUO UBQ-ES503、UBQ-ES505、UBQ-ES703(2012-02-21)
◆Heir Audio Heir 3.A(2012-02-15)
■moshi audio Clarus(2012-02-12)
◆Thousand Sound TS842(2012-02-08)

◆Heir Audio Heir 8.A(2012-02-01)
■CRESYN(2012-01-17)
◆Unique Melody Merlin(2012-01-08)
◆カナルワークスCW-L01P(2012-01-03)
■ファイナルオーディオデザイン Adagio(2011-12-31)

◆LEAR LCM-2B(2011-12-26)
●SOUL by Ludacris SL100、150、300(2011-12-23)
●AKG K550(2011-12-20)
■SENNHEISER IE80 & IE60(2011-12-16)
■DUNU(2011-12-14)

◆カナルワークスCW-L10(2011-12-12)
■オーディオテクニカ ATH-CK90PROMK2(2011-12-09)
◆Ultimate Ears UE 5 Pro(2011-12-06)
■REALM IEM856(2011-12-02)
■ファイナルオーディオデザインAdagio III(2011-11-26)

◇Ultimate Ears用交換ケーブルFiiO RC-UE1&オヤイデ電気HPC-UE(2011-11-25)
●Reloop RHP-20(2011-11-22)
■オーディオテクニカ ATH-CK100PRO(2011-11-14)
■SOUL by Ludacris SL99(2011-11-04)
■Fischer Audio Ceramique(2011-10-25)

■SHURE SE535 Special Edition(2011-10-21)
■JVCケンウッドHA-FX40(2011-10-16)
■BauXar EarPhone M(2011-10-10)
■SONOCORE COA-803(2011-10-02)
◆TripleFi 10 ROOTHリモールド(2011-09-25)

■AKG K3003(2011-09-18)
■Atomic Floyd SuperDarts+Remote(2011-09-11)
■Bowers & Wilkins C5(2011-09-06)
■Westone3(2011-09-02)
◆カナルワークスCW-L31(2011-08-26)

◇ORB JADE to go(2011-08-22)
■YAMAHA EPH-100(2011-08-14)
■NW-STUDIO(2011-08-09)
■NW-STUDIO PRO(2011-08-02)
◆FitEar MH334(2011-07-29)

◆ROOTH SE530×8(2011-07-26)
■Westone ES5(2011-07-21)
●SHURE SRH940(2011-07-17)
◆Ultimate Ears 18 Pro(2011-07-15)
■クリエイティブAurvana In-Ear3(2011-07-06)

◆カナルワークス CW-L01(2011-07-01)
■GRADO GR10&GR8(2011-06-25)
◇SAEC(サエク)SHURE SE用ケーブル(2011-06-21)
■フィアトンPS 20&PS 210(2011-06-17)
■ZERO AUDIO ZH-BX500&ZH-BX300(2011-06-11)

■フィリップスSHE8000&SHE9000(2011-06-03)
■アトミック フロイド(2011-05-26)
■モンスター・マイルス・デイビス・トリビュート(2011-05-20)
■SHURE SE215(2011-05-13)
■ファイナルオーディオデザインPiano Forte IX(2011-05-06)

■ラディウス・ドブルベ/ドブルベ・ヌメロドゥ(2011-05-01)
■ローランドRH-PM5(2011-04-23)
■フィリップスSHE9900(2011-04-15)
■JAYS q-JAYS(2011-04-08)
◇フォステクスHP-P1(2011-03-29)

■Klipsch Image X10/X5(2011-03-23)
■ファイナルオーディオデザインheaven(2011-03-11)
■Ultimate Ears TripleFi 10(2011-03-04)
■Westone4(2011-02-24)
■Etymotic Research ER-4S(2011-02-17)

■KOTORI 101(2011-02-04)
■ゼンハイザーIE8(2011-01-31)
■ソニーMDR-EX1000(2011-01-17)
■SHURE SE535(2011-01-13)
■ビクターHA-FXC51(2011-01-12)