【BARKS編集部レビュー】Astell&Kern AK380 アンプ、こいつはナニモノだ?

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9月18日、ハイエンド音楽プレイヤーAstell&Kern AK380向けに、専用アンプ「Astell&Kern AK380 アンプ メテオリックチタン」が99,980円で発売となった。そもそもAK380に向けた専用設計なので、ガチャンコと簡単に一体化でき、デザイン的にも運用・使い勝手ともによく練り込まれている。実売9万円余りの追加予算をもって超サイヤ人を超サイヤ人2にするようなものだが、果たしてこいつは、買いか否か。

◆Astell&Kern AK380 アンプ画像

さて、答はどうだろう。難しい。要するに、超サイヤ人2になることが誰にとってもハッピーなことなのか…そういう話のような気がするからだ。天下一武道会で優勝できるAK240の方が幸せじゃないのか? 村の大会で優勝できるAK Jrのほうが楽しいのではないか…とか。



AK380アンプは実売9万円もの高額商品なので、その効果に大きな期待を寄せてしまうのはやむないことだけれど、実際は、さして驚きの効果が現れるわけではない。素のAK380単体が既に極めて高いレベルにあるからだ。私感だが、眼を見張るような音質向上というよりも、音の深みが明らかに大きく変わっている。事実、ボトムの充実は眼を見張るものがある。表現するための扱えるエネルギー量がぐっと増えたことで、表現にさらなる余裕がでている。

元来、品質向上は費用対効果の大きい要素から着手されるため、ハイエンドになるにつれてコストはより増加し、コストパフォーマンスは指数関数的に悪化していく。こと人跡未踏の最先端を孤軍奮闘するAK380のようなエッジの効いた商品を、さらに突き抜けさせるオプションパーツであるから、振り絞るように生み落とされた効果の大小をどう評価するかは、何を求めているのかの価値観に委ねられる。

AK380アンプの登場は「こういうドーピングをすると、ここまで突き抜けまっせ」という、あるひとつの可能性を示したものであり、どうにも「これがAK380の完成形なんです」と主張しているとは思えない。なぜなら「完成形はAK380単体で既にでき上がっている」からだ。

初代AK100から一貫して、Astell&Kernは「スマートなオーディオのたしなみ方」を実現させてきた。モデルチェンジもデザイン変更にも妥協を排し、徹底したスマートなポータブルオーディオのライフスタイルを提唱してきた歴史がある。AK240のだまし絵のようなデザインは、ポータブルの限界を優れたデザイン力でねじ伏せてみせるという圧倒的なプロダクト力を結実させた好例だったが、名機AK240という一つの完成形を見せた彼らは、音楽のクラウド化と歩調を合わせるように「コントロールセンターとしての機能と拡張性」という新たなテーマのもとにAK380を誕生させた。ポータブル機としての完成形はやはり、AK380単体で達成されており、AK380アンプは拡張と発展のベクトル上に存在している。これまでのポータブルオーディオを提唱する延長上にAK380アンプは存在しない、というのが私の解釈だ。

AK380アンプと合体しメガ進化させたAK380+AMPは、もうジーンズのケツポケットに入れられる大きさと重さではなくなった。この時点でポータブルプレイヤーではないし、これまでのAstell&Kernがこれを「これがAK380の最終型ですので、持ち運んで楽しんでね」と言うとは思えない。AK380アンプを購入するということは、据え置きとしての拡張をもたせるんですね?という問いにYESと答えるということだ。だからこそ、クレードルやCDリッパーという周辺機器が開発されているわけだ。ポータブル機器としての拡張アイテムではないのである。





しかしこうやってメガ進化した状態で運用していると、音の実在感はぐっと上がるので、楽器の音がそこにあるようなリアリズムが向上し、もう外したくなくなる。使い込んでみると出力はローでもちょっと物足りなさを感じてきてしまい、最終的にはハイ出力の一択になっていく。能率の高いイヤホンであろうとも、ハイにすると押しが強くて全域がくっきりする。ボトムの太さも抜けも違うし、それでいて甘さとスピード感がある。もう抗うことのできない高品質な音のツボを確実に突いてくる。

最新鋭のデジタル機器をつかまえて変な話だが、ここまで突き詰められたサウンドは、デジタルっぽさからはどんどんかけ離れ、トーンは極めてアナログっぽくなり、なにやら真空管で駆動しているかのようなトルクフルで艶っぽい重たさが生まれてくる。もともと再現しようとしているものは音楽というアナログな空気振動だから、当然の帰結なのだろうけど、究極のデジタル機器からのアウトプットはデジタル臭が皆無になるということを直球で教えてくれるのも、AK380アンプの一面だ。そういえばDSD音源自体、ネイティブで再生するとすっかりアナログの香りだもんなあ…。




▲左がAstell&Kernの中でも最もスリム(薄い)なAK Jr、中央が名機AK240、右がアンプと合体したAK380+AMP。

もうAK380アンプは外したくない。でもポケットには入らない。ずいぶんでかいし猛烈に重いし、気軽に持ち運ぶ限界をとっくに超えている。やっぱりポータブルオーディオの限界はAK380単体までだった。毎日AK380アンプの付け外しをするのか? 持ち運びは諦めるのか…このサイズを「無理矢理」持ち運ぶのか? 移動中はAK240をメインにするか…答はまだ出ていない。

Astell&Kernってほんと罪なものを作ると思う。煩悩を生み業を知る、ちょっと恐いブランドだ。可搬性というポータブルオーディオとしての生命線に刃を立てるのが、AK380アンプだ。こんなSっ気たっぷりの商品を、さくっとリリースするから困る。

まぁ、まだ手に入れて日は経っていない。AK380+AMPという頑固者をどう手なずけるかが、近々の新たな私のテーマだ。運ぶ?外す?…どんな気分になるか、その日その日の自分に聞いてみることにしよう。

text by BARKS編集長 烏丸哲也

●Astell&Kern AK380 アンプ メテオリックチタン


AK380-AMP-MT
2015年9月18日(金)
オープン※直販価格 \99,980(税込)

アイリバーサポートセンター
月曜~金曜 10:00~18:00(祝祭日および年末年始を除く)
ナビダイヤル:0570-002-220
http://www.iriver.jp/support/inquiry/

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BARKS編集長 烏丸レビュー

■イヤホン ●ヘッドホン ◆カスタムIEM ◇他
◆ONKYO IE-C3(2015-09-13)
◇AK Jr+Fidue A73+Westone UM56(2015-09-06)
■RHA T20(2015-08-24)
◇Westone UM56(2015-08-15)
◇Astell&Kern AK380(2015-08-10)

◆カナルワークスCW-L33BB(2015-08-07)
■Fidue A65(2015-07-29)
■DITA ANSWER(2015-07-18)
◆LEAR LCM-BD4.2(2015-06-21)
■DUNU DN-2000J(2015-06-14)

■2015年上半期 お薦めイヤホン(2015-06-06)
◆Noble Audio Savant(2015-05-28)
◆Westone ES30(2015-05-10)
◆JH AUDIO Roxanne(ロクサーヌ)(2015-04-24)
◇SONY NW-ZX2(2015-04-17)

◆カナルワークスCW-L15(2015-04-11)
◆Heir Audio 10.A(2015-03-15)
●v-moda Crossfade M-100(2015-03-01)
◆FitEar Aya~彩(2015-02-23)
◇UE MEGABOOM(2015-02-8)

◇COWON PLENUE 1(2015-01-25)
■Unique Melody Maverick(2015-01-12)
◆rhines stage 5(2015-01-03)
◇Calyx M(2015-01-01)
■LIVEZONE R4 LZ 4ユニバーサル(2014-12-15)

■ROCK JAW KOMMAND(2014-12-14)
■Donguri-楽 濃茶&鐘(2014-12-08)
■DUNU ALPHA 1(2014-11-30)
■Fidue A71(2014-11-23)
◆AAW M20(2014-11-16)

◆Ultimate Ears UE 7 Pro(2014-11-3)
■絶対失敗しない攻めのサウンド、お薦めイヤホン6品(2014-10-21)
■NOBLE AUDIO Kaiser 10 universal(2014-10-18)
◆カナルワークスCW-L71PSTS(2014-10-12)
■UCOTECH IL300 affetto(2014-10-05)

◆rhines stage 4U(2014-09-28)
●ROCK JAW ACERO(2014-09-21)
◆Westone ES60(2014-09-14)
■Astrotec Lyra(2014-09-08)
■NOBLE FR(WIZARD)(2014-08-26)

■Fidue A83(2014-08-19)
◇Musician's Ear Plugs(2014-08-10)
◆Noble Audio 5C R Configuration(2014-07-27)
◆FitEar萌音-MONET(2014-07-21)
■SHURE SE112(2014-07-13)

■Blue Ever Blue 878(2014-07-01)
■茶楽音人Donguri-楽(RAKU)(2014-06-24)
■オーディオテクニカATH-CKR10(2014-06-14)
◇estron Music、BaX(2014-06-03)
■OSTRY KC06(2014-05-18)

◆VISION EARS VE6 Xcontrol(2014-05-25)
■Fidue A81(2014-05-17)
◆カナルワークスCW-L32(2014-05-04)
■アルティメットイヤーズUE900s(2014-04-26)
■Astrotec AX60&AX35(2014-04-20)

◆CUSTOM ART Pro 330v2(2014-04-13)
●MPC Headphones(2014-04-06)
●Klipsch STATUS(2014-03-30)
●SMS Audio STREET by 50 DJ Pro Performance Headphones(2014-03-23)
◆AK240×カスタムIEM(2014-03-16)

■RHA MA750(2014-03-09)
■Meze 11 Deco(2014-03-02)
◇Astell&Kern AK240(2014-02-22)
◆1964 EARS V6-Stage(2014-02-17)
◆カナルワークスCW-L32V(2014-02-09)

◇EarPeace HD(2014-02-02)
◆Noble Audio Kaiser 10(2014-01-19)
◆Clear Tune Monitors CT-300Pro(2014-01-04)
◇KLIPSCH KMC1(2014-01-01)
■DUNU DN-1000(2013-12-30)

◆Ultimate Ears Reference Monitors(2013-12-16)
◆Ultimate Ears 11 Pro(2013-12-08)
◆earmo Tune5(2013-12-03)
●オーディオテクニカATH-OX7AMP(2013-11-23)
■音茶楽Donguri-欅(KEYAKI)(2013-11-17)

■オーディオテクニカ ATH-IM01~04(2013-10-27)
◇Astell&Kern AK10(2013-10-25)
●フィリップス Fidelio M1(2013-10-22)
◆earmo Tune4(2013-10-12)
◆Ultimate Ears Personal Reference Monitors(2013-10-05)

◆Sensaphonics 2XS(2013-09-30)
■Earsonics SM64(2013-09-23)
◆LIVEZONER41 LZ12(2013-09-15)
◆Ultimate Ears カスタムIEM全7機種(2013-09-08)
◆null audio Elpis(2013-09-03)

■FitEar Parterre(2013-08-25)
◆カナルワークスCW-L12(2013-08-17)
◆Livezoner41 LZ 4(2013-08-06)
■SHURE SE846(2013-08-02)
■オーリソニックスASG-2 with BassPort(2013-07-28)

■Hippo ProOne(2013-07-21)
◆カナルワークス CW-L51a(2013-07-13)
■EXS X10(2013-06-24)
■音茶楽Flat4シリーズ粋、楓、玄(2013-06-17)
◆LEAR LCM-1F(2013-06-10)

◇Ultimate Ears UEブーム(2013-05-28)
◇Stage93 93PC(2013-05-20)
●Meze Headphones(2013-05-08)
●Fischer Audio Jubilate(2013-04-29)
◇ORB JADE casa(2013-04-21)

◆lime ears LE3(2013-04-14)
◇雑誌「DigiFi 第10号」付録(2013-04-06)
●Ultimate Ears UE 9000、UE 6000、UE 4000(2013-04-01)
■開放型インナーイヤーイヤホンおススメ5モデル(2013-03-19)
◆LEAR LCM-5(2013-03-16)

●フィリップスFidelio L1(2013-02-25)
○スマホが与えた音楽リスニングのモラル変革(2013-02-17)
■Klipsch Image X7i(2013-02-04)
◆LEAR(2013-01-27)
◆カナルワークスCW-L05QD(2013-01-13)

◆earmo(2013-01-02)
◆Westone AC2(2012-12-25)
◇Stage93 93SPEC(2012-12-16)
●California Headphone Silverado、Laredo(2012-12-09)
■音茶楽Flat4-楓(2012-12-03)

◆Stage93 Stage 6(2012-11-26)
●GRADO SR60i(2012-11-19)
◇Astell&Kern AK100-32GB-BLK(2012-11-15)
●オーディオテクニカ ATH-WS99(2012-11-10)
■アトミック フロイドPowerJax+Remote(2012-10-29)

◇VORZUGE VorzAMPduo(2012-10-26)
●ファイナルオーディオデザイン heaven VI(2012-10-16)
●beyerdynamic T 90(2012-10-08)
●GRADO GS1000i(2012-09-30)
●SENNHEISER HD 700(2012-09-16)

◆ACS T1 Live!(2012-09-11)
●オーディオテクニカ ATH-AD2000 ATH-AD1000(2012-09-03)
●GRADO RS1i、SR325is、PS500(2012-08-20)
◆FitEar MH335DW(2012-08-15)
●DIESEL VEKTR(2012-08-07)

◆カナルワークスCW-L51 PSTS(2012-07-30)
●Fischer Audio FA-002W(2012-07-25)
●Pioneer SE-MJ591(2012-07-16)
■GRADO iGi(2012-07-12)
●HiFiMAN HM-400(2012-06-26)

●Klipsch Reference One(2012-06-17)
●GRADO PS1000(2012-06-09)
●ULTRASONE edition 8(2012-06-02)
●PHONON SMB-02(2012-05-28)
■音茶楽Flat4-粋(SUI)(2012-05-20)

●<春のヘッドフォン祭2012>、Fischer Audio FA-004(2012-05-13)
◇Hippo Cricri、Go Vibe Martini+、VestAmp+(2012-05-04)
■ファイナルオーディオデザインheaven IV(2012-04-28)
■フィッシャー・オーディオ Jazz (2012-04-22)
●SHURE SRH1840 & SRH1440(2012-04-16)

■FitEar TO GO! 334(2012-04-08)
◆Unique Melody Mage(2012-03-26)
●Takstar PRO 80、HI 2050、TS-671(2012-03-20)
●klipsch Mode M40(2012-03-15)
■Fischer Audio DBA-02 Mk2(2012-03-07)

◆AURISONICS AS-1b(2012-02-27)
■UBIQUO UBQ-ES503、UBQ-ES505、UBQ-ES703(2012-02-21)
◆Heir Audio Heir 3.A(2012-02-15)
■moshi audio Clarus(2012-02-12)
◆Thousand Sound TS842(2012-02-08)

◆Heir Audio Heir 8.A(2012-02-01)
■CRESYN(2012-01-17)
◆Unique Melody Merlin(2012-01-08)
◆カナルワークスCW-L01P(2012-01-03)
■ファイナルオーディオデザイン Adagio(2011-12-31)

◆LEAR LCM-2B(2011-12-26)
●SOUL by Ludacris SL100、150、300(2011-12-23)
●AKG K550(2011-12-20)
■SENNHEISER IE80 & IE60(2011-12-16)
■DUNU(2011-12-14)

◆カナルワークスCW-L10(2011-12-12)
■オーディオテクニカ ATH-CK90PROMK2(2011-12-09)
◆Ultimate Ears UE 5 Pro(2011-12-06)
■REALM IEM856(2011-12-02)
■ファイナルオーディオデザインAdagio III(2011-11-26)

◇Ultimate Ears用交換ケーブルFiiO RC-UE1&オヤイデ電気HPC-UE(2011-11-25)
●Reloop RHP-20(2011-11-22)
■オーディオテクニカ ATH-CK100PRO(2011-11-14)
■SOUL by Ludacris SL99(2011-11-04)
■Fischer Audio Ceramique(2011-10-25)

■SHURE SE535 Special Edition(2011-10-21)
■JVCケンウッドHA-FX40(2011-10-16)
■BauXar EarPhone M(2011-10-10)
■SONOCORE COA-803(2011-10-02)
◆TripleFi 10 ROOTHリモールド(2011-09-25)

■AKG K3003(2011-09-18)
■Atomic Floyd SuperDarts+Remote(2011-09-11)
■Bowers & Wilkins C5(2011-09-06)
■Westone3(2011-09-02)
◆カナルワークスCW-L31(2011-08-26)

◇ORB JADE to go(2011-08-22)
■YAMAHA EPH-100(2011-08-14)
■NW-STUDIO(2011-08-09)
■NW-STUDIO PRO(2011-08-02)
◆FitEar MH334(2011-07-29)

◆ROOTH SE530×8(2011-07-26)
■Westone ES5(2011-07-21)
●SHURE SRH940(2011-07-17)
◆Ultimate Ears 18 Pro(2011-07-15)
■クリエイティブAurvana In-Ear3(2011-07-06)

◆カナルワークス CW-L01(2011-07-01)
■GRADO GR10&GR8(2011-06-25)
◇SAEC(サエク)SHURE SE用ケーブル(2011-06-21)
■フィアトンPS 20&PS 210(2011-06-17)
■ZERO AUDIO ZH-BX500&ZH-BX300(2011-06-11)

■フィリップスSHE8000&SHE9000(2011-06-03)
■アトミック フロイド(2011-05-26)
■モンスター・マイルス・デイビス・トリビュート(2011-05-20)
■SHURE SE215(2011-05-13)
■ファイナルオーディオデザインPiano Forte IX(2011-05-06)

■ラディウス・ドブルベ/ドブルベ・ヌメロドゥ(2011-05-01)
■ローランドRH-PM5(2011-04-23)
■フィリップスSHE9900(2011-04-15)
■JAYS q-JAYS(2011-04-08)
◇フォステクスHP-P1(2011-03-29)

■Klipsch Image X10/X5(2011-03-23)
■ファイナルオーディオデザインheaven(2011-03-11)
■Ultimate Ears TripleFi 10(2011-03-04)
■Westone4(2011-02-24)
■Etymotic Research ER-4S(2011-02-17)

■KOTORI 101(2011-02-04)
■ゼンハイザーIE8(2011-01-31)
■ソニーMDR-EX1000(2011-01-17)
■SHURE SE535(2011-01-13)
■ビクターHA-FXC51(2011-01-12)
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